ニッケイ新聞 2007年9月20日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利引き下げによりサンパウロ市証券取引所は十八日、株価指数を四・二八%上げ、五万六六六六ポイントに付けた。これは金融危機が起きた七月二十三日前夜の五万八〇三六ポイントに近い水準であり、市場に活気を呼び戻したと言えそうだ。ドル通貨は、二・二四%下げ一・八七七レアルへ。ブラジル・リスクは八・五%も下げ、一八二ポイントで金融危機前の一六八ポイントに接近した。
FRBが政策金利で予想を上回る〇・五ポイントも引き下げたことは、市場関係者を驚かせた。国際経済のリセッション回避のためというFRBの決断は、ブラジル株式市場の主要銘柄の額面を押し上げた。全世界の証券市場も十八日、一斉に活気を取り戻した。
一方、FRBの金利引き下げによるインフレへの影響で、将来引き起こされる米経済の歪みについて、関係者は成り行きを見守っている。基本金利引き下げを懸念したブラジル中銀にも、ドル通貨がまた下がり始めたことで大きな影響を及ぼしそうだ。
今回のFRBの措置で、米経済の最も恐れるリセッションを回避できたらしい。疑問なのは、不動産ローンがそれほど金融危機の重大要因であるなら、何故二カ月も放置したのか。不動産ローンに続く第二のバブルがすでに形成されているのではないかだ。
FRB発表には、注意すべき説明書きがついた。米経済に解雇や失業者増加のリスクが存在すること。不動産ローンの引き締めは、景気停滞を招くこと。そのためリセッション対策を優先し、インフレ対策を後回しにした。リセッション回避の見通しがつき次第、インフレ抑制に取り掛かるというのだ。
不動産ローンの扱い次第で米経済が左右されるなら、何故もっと早く手を打たなかったのか。バーナンキFRB議長は、FRBが不動産ローンの血管の中に生じた血栓を除いたので、景気低迷のリスクは小さいという。だがFRBが大幅な金利引き下げに踏み切った経緯について、説明が不十分である。FRBは何かを隠しているようだ。
米証券市場は景況の回復を祝って乾杯をしたが、いつまた冷水を浴びせられるかは分からない。疑問の一つは、金融市場から引き上げた流通量をしばらくの間戻さないこと。特に米証券市場には、だ。
政策金利を引き下げた今、インフレ回避のため流通量は増えない。第二の不動産バブルが形成される恐れがあるから。グリーンスパン前議長が政策金利は低いと懸念したのに、新米のバーナンキ議長がさらに下げてローンの管理をできるのか。
これからドル通貨の下落は、為替市場ばかりでなくコモディテイ(必需品)や証券、不動産などをも道連れとするに違いない。これはブラジルにとって追い風となり、思わぬ幸運が転がり込みそうだ。
米経済がリセッションを回避できるなら、ブラジルの生産は多くの外国投資に支えられながら伸びるのではないか。世界的な景気の落ち込みも払拭できるなら、ブラジル中銀は基本金利の引き下げを継続すると予測される。