ニッケイ新聞 2007年9月20日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】現行のブラジル道路交通法(CTB)が十年前の一九九七年に施行されてから二〇〇五年までの八年間に、全国の交通事故死者数の人口に占める割合は、十万人当り十二・五人から八・五人へと三二%低下した。
八年間に人口は一億六〇〇〇万人から一億八〇〇〇万人に、自動車の登録台数は二八〇〇万台から四〇〇〇万台に増えたことを考慮すると、全体比で死者数は大幅に減少したと言えるが、それでも〇五年に三万五〇〇〇人が事故で命を失っており、負傷者数は四十万人、うち十万人は後遺症に苦しんでいる。事故による経済的損失は全国で年間二八〇億レアルに上る。
公共交通全国協会(ANTP)のブラジリエンセ交通委員長は、交通事故件数はまだまだ多いとしながらも、一定の前進がみられると十八日に発表されたデータを前向きに評価している。
交通渋滞が激しいサンパウロ市では、十万人当りの事故死者数が二・八人と全国の州都の中では最も割合が低い。同委員長は九一年に始まった交通監督官の取締りと市民の安全意識の高まりが好結果の理由とみている。しかし専門家の中には、渋滞が激しいから死者が少ないだけで状況は深刻とみなす者もいる。参考までにヨーロッパ諸国は二人、日本は一・二人。
死亡事故の内容をみると、自動車にはねられて亡くなる歩行者が最も多いが、若者に多いオートバイ運転者の犠牲者増加を保健省は懸念している。同省のデータによると、十五歳から二十四歳までの若者でオートバイ運転中に死亡した人の数は〇五年に二二八四人だったのに対し、はねられて死亡した人は一二一九人だった。〇四年に死亡した十歳から十九歳までの若者は、殺人に次ぎ交通事故死が二番目に多かった。
オートバイ運転者の死者が減少した唯一の州はミナス・ジェライス州で、交通と保健関係の団体が協力して実施した、事故が頻発する地点の確認と救急車の待機といった予防策が効果を表した。サンパウロ市では十五万人に上るモトボーイ(バイク配達者)がいるが、市条例の定める登録を行っている人は三四九六人に過ぎない。車線の幅が十分でないのに車線間の通行を認めた道交法五六条がオートバイ事故と死者の原因と交通の専門家は指摘している。
点数評価に基づく処罰制度を含む道交法原案を九七年に下院で提案したジョゼー元下議(ブラジル労働党=PTB)は、自分のせいで罰金を払わされ、運転免許を取り消されたと非難されたが、この法律のおかげで事故の悲劇が減ったと胸を張る。そして飲酒運転の摘発など交通違反取締りをさらに強化する必要があると主張している。