ニッケイ新聞 2007年9月20日付け
日伯間では五十八の地方自治体が姉妹都市提携を結んでいるが、兵庫県とパラナ州の提携はそのモデルともいえそうな活動をしている。州都クリチーバ市には全都道府県でも珍しい兵庫県ブラジル事務所(山下亮所長=まこと、63)が置かれ、立派な和風木造建築の「兵庫姫路会館」まで建っている。
州県レベル提携に加え、ロンドリーナ市と西宮市、マリンガ市と加古川市、パラナグア市と淡路市も姉妹友好都市だ。山下所長によれば「フォス・ド・イグアスー市と明石市が調整を行っている最中」だという。
この関係を礎に、百周年にはロンドリーナは兵庫県物産展、マリンガは日本公園、クリチーバも百周年記念公園の企画が進んでいるのは既報の通りだ。
兵庫姫路会館は兵庫県と同州の交流の拠点として九六年に建設され、翌九七年に日伯修好百周年(九五年)を記念して天皇皇后両陛下が来伯された折りには、お立ち寄りになった。
パラナ州と兵庫県の姉妹州県二十五周年(七〇年に提携)と、クリチーバ市と姫路市の姉妹都市十五周年(八四年に提携)も記念して、日本側から四十万ドルが送金され、同市が提供した土地に建設された。
地下一階地上二階。地下には二百人収容の会議場とサロン、地階には兵庫県特産品展示コーナー、事務室、所長室、姫路城の模型が飾られたサーラ・デ・ヒメジ、二階はパラナ日伯商工会議所の事務所で、ベランダ部分は回り廊下になっている。
兵庫県は、米国、フランス、オーストラリア、香港(中国)、ブラジルと海外五カ国に事務所をもっており、ブラジル以外は県職員を派遣している。パラナ兵庫県人会長も務める山下所長は県嘱託職員でもあり、交流促進に専念している。
同事務所のブラジル登記名はインスチトゥート・ヒョウゴで、サンパウロ市のブラジル兵庫県人会(尾西貞夫会長)と協力しあいながら、母県からの使節団や農業高校生海外研修生の受け入れ、兵庫県を訪問する経済使節団などの日程調整などをする。兵庫県はブラジルから毎年二人ずつ研修生を受け入れており、その募集と送り出しも担当する。
学生移住連盟第六次、六九年に移住した山下所長の元々の本職はしいたけ作り。農家だけあって環境意識が高く、環境関連のCDブックを三枚出版するなどの事業も進めている。
さらに来年は移民百周年を記念して、宇佐美昇三著『笠戸丸から見た日本―したたかに生きた船の物語』(海文堂、〇七年)のブラジル移民部分を中心にポ語翻訳版を出版する予定。山下所長は「ルーラ大統領の挨拶ビデオを収録したCDを本に付けたい」と希望を語る。希望者に無償で配布したい、という。
クリチーバ市が開設する予定の百周年記念公園に、笠戸丸の錨などを引き上げて設置する件に関しても、宇佐美氏との連絡役を務める。同公園に設置するため、サンパウロ市の移民史料館にある笠戸丸の模型より一回り大きい、一メートル半の模型制作も進めている。
名実の伴わない姉妹都市関係が多い中、ここはひと味違った事業を進めている。団結の強いパラナ日系社会の日伯の絆を、基礎から支えるのがこの交流といえそうだ。