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失業保険の支給増える=年17%のペースで=景気回復の流れに逆らい=労働者は使い捨て

ニッケイ新聞 2007年9月25日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十四日】労働省は二十二日、二〇〇二年から〇七年の間に失業保険の支払い額が五七億レアルから一二七億レアルに増額され、年々一七・三%増えていると発表した。ブラジル経済は過去十年間で最も順調な時期にあるのに、〇一〇年は五二%増の一九五億レアルに達する見込みという。これは勤務年限退職積立金(FGTS)の引き出しが急増したことで、企業の消費人事による雇用期間の短縮と労働者の新陳代謝が進んでいるからと見られる。
 ブラジルにおける最近の労働事情は、転職が恒常化し、三分の一の職場が理由の有無にかかわらず解雇と新採用を繰り返して年々新旧交代し、新陳代謝が進んでいる。労働者使い捨ての消耗品扱いは、ラテン・アメリカでブラジルが最も著しい。
 ブラジルは不思議な国だ。景気低迷で産業が沈滞しているのに税収は記録を更新、泣く子と地頭ならぬ国税庁には勝てない。今度は経済が好調で前向きなのに、失業保険の支払いが増えている。ブラジルは、経済理論の逆説を地で行く国と言えそうだ。
 雇用の増加は明白だが、雇用期間の短縮による使い捨て人事が行われているからだ。さらに解雇されるとFGTSを引き出せるため、労働者の新陳代謝に拍車を掛けている。FGTSを受け取り、さらに失業保険の支給を受けられるので、転職にもちゅうちょしなくなったらしい。
 経済の歯車が順調に動き出す程、FGTSと失業保険、転職はサラリーマンのお決まりコースとして定着する。労働法には労働者が六カ月以上勤続し、重大過失を起こすことなく解雇されると、三カ月分の給与が失業保険として支給されると謳われている。三年以上勤続すると、失業保険は五カ月へ増額される。
 転職を機会に生活水準の向上を目指す労働者の側から見ると、失業保険は渡りに舟である。世渡り上手は別として、失職してからアングラの臨時雇用で働き、失業保険と両方から収入を得ることができる。精神的余裕ができると、職探し巡礼も気楽になる。応募者の行列にはバス代だけを握り、空腹を堪えている者も少なくない。
 景気が右肩上がりの現在、FGTSは退職奨励金といえそうだ。最近は簡単に労働者のクビが切れるため、正規雇用も増えた。まさに労働者は使い捨ての消耗品である。解雇労働者の失業保険申請は六〇%増、人数にして三六〇万人、昨年比六%増の勢い。
 最低賃金の増額も、失業保険支給に拍車を掛けた。最低賃金は、〇二年から〇七年に二〇〇レアルから三八〇レアルへと九〇%も増えた。インフレ率を遥かに上回った。
 〇六年度の正規雇用者の解雇数は一一六〇万人なのに、企業は一二八〇万人の代替要員を採用した。雇用数は一二〇万人増えたが、〇七年も同様ケースを繰り返す模様。これは雇用増が、失業保険増につながることを意味する。
 新陳代謝のスピード・アップはブラジル産業最近の特徴で、労働の質と賃金低下を示している。さらに企業は高給取りのクビを切り、薄給職員への入れ替えに力を入れている。