ニッケイ新聞 2007年10月3日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】農産物コモディテイ相場の上昇により、アグフレーションという新語が生まれたとICONEが伝えた。新語は農産物が高止まりし、従来の需給法則が機能しないという意味に使われる。これはバイオ燃料が、コモディテイ相場の底支えをしているからだと政府は見る。
これまで農産物は生産技術の向上により、食品の価格上昇がインフレ率を下回るという見方が定着していた。それがコモディテイ市場で異変が起き、需給市場に機能不全が懸念されている。見方はまだ肯定と否定両論だが、市場機能の異変は否定できない。
農産物が高留まりするほど、需要が過熱しているわけではない。バイオ燃料の需要に、便乗しているだけといえる。高値の理由として原油高騰による肥料や農業資材、海上輸送費の高騰を挙げるがだ。
一九九六年から二〇〇六年の国連統計で見ると、物価のインフレ三二%に対し食品の高騰は一三%と下回った。しかし、二〇〇二年から二〇〇六年で見ると、物価インフレ二六%に対し食品四六%と逆転している。これは何が、あったのだろうか。
さらに過去へ遡り一九八六年から一九九二年で見ると、物価のインフレ九%に対し食品が二三%と高かった。物価インフレと食品インフレが五年周期で交代するならば、アグフレーションは沈静するようだ。
農産物価格を形成する肥料は、原油に依存する窒素と尿素に左右される。燐酸肥料やカリウム肥料も、鉱山資源偏在のため不足している。肥料価格の高騰は、食品インフレの二倍であった。この辺の事情は、米国とブラジルも同様。これは、バイオ燃料も同じケースに入るようだ。
これらの結論からアグフレーションとなる原因は、見当たらない。長い目で見て、食品価格は、不測の事態が起きないかぎり安定すると見られる。それから農産物市場における先進国の比重が低下し、途上国が主役になったこともコモディテイを高止まりさせた要因といえそうだ。