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将来の日系社会構想を発表=パソコン教室で新会員獲得へ=「文協に新しい空気必要」=JICA日系研修 中島エドアルド事務局長

ニッケイ新聞 2007年10月3日付け

 ブラジル日本文化福祉協会の事務局長、中島エドアルドさん(47、二世)がJICAの日系研修に参加した成果、活動計画「多文化的な日系社会を新たな日本とブラジルの掛け橋とする」を九月十九日の理事会で報告し、役員たちから拍手で歓迎された。
 中島事務局長は「百周年後の日系団体の活動はどうなるのか」という長期的な展望にたったテーマを抱えて、七月末から約四十五日間訪日し、「地域活性化研修」にのぞんだ。
 主に北九州の産業発展、日本式生産方式、大分一村一品運動の現場視察などを行い、最新の運営思考を見聞きし、実践的なワークショップを体験する中でアイデアを練った。
 将来の日系社会は「血筋に関わらず、日本文化を継承したい人全体に拡大する」と基本理念を前提に発表した。今回の日本での研修経験に照らし合わせ、全伯に四百以上もある日系団体の運営手法を改善することが必要であり、その中央機関たる文協には「新たな空気が必要」と断じた。
 いずれ「ブラジル的日本文化が日本に影響を与える日もあるだろう」とし、将来的には逆流現象が起きるとの観測ものべた。
 現在は日系人中心に対応している文協だが、今後は「日本文化愛好一般市民・企業」に開かれた存在に、と提言。運営資金源も、進出企業や日系企業から「一般有力日本文化愛好企業」へ。行政との関係も、現在の日本政府筋中心からブラジル政府筋中心へと重心を移した方向性を提唱する。
 地方団体との関係も文協の中心指導型から、議会制連携タイプへ移行することを勧める。文協が構想を練って地方に一方的に協力を依頼するのではなく、共に考えていく姿勢だ。
 このように地方団体との連携を強めるには、インターネットの活用が不可欠であり、全伯団体が情報交換をできるようなホームページ「文協ネット」の早期構築を訴えた。
 地方との関係の中で、各地域の特色を活かした事業「一村一品」運動を進むように支援する方向性も打ち出された。
 また、百周年を機に、日伯両国民に日系社会の貢献を広報する。それらの活動を通して、文協が日系社会の代表団体としてのあり方を再構築する。
 具体的には、文協と地方団体との関係を緊密化させるために、地方巡回して懇談を行う「日系団体協議会」や「日系団体事務局長会議」の設置などを提唱している。これらの会議を通して、文協ネットの説明と参加依頼、各地域の活動状況の把握と共通のテーマを見つける。
 すでに各地の団体がもっている会館施設を活用してパソコン教室を開催する。一般市民に開放し、日系人の高齢者はもちろん、非日系人の一般低所得者層への新たな社会貢献の道を探り、存在価値を模索する。
 同時に、パソコン教室に通う層にも文協ネットの愛好者になってもらい、将来の日本文化愛好者予備軍を育成する。
 〇七年中には文協をはじめサンパウロ市内数カ所で開始し、来年には全伯の主要日系連合会にも設置してもらい、〇九年にはその連合会の傘下の各団体にも設置してもらい、三百カ所、計十万人の新しい日系施設利用者をつくる考え方だ。
 文協理事会では、地方理事の中山喜代治モジ文協会長から数年前からパソコン教室を始めている経験が語られたほか、出席した他の地方理事からも文協ネットを早く初めて欲しいとの要請もあった。
 山下譲二副会長は「このアイデアをもっと討論して、文協だけでなく他の団体とも共通の認識を作って行かなくては」と歓迎する感想をのべた。