ニッケイ新聞 2007年10月3日付け
サンパウロから西へ630キロ。バスを寝過ごして降りたったのは、奥ソロカバナ線プレジデンテ・ベンセスラウ。今年創設80年を迎えた同市は、プレジデンテ・プルデンテから60キロ近く離れた静かな街だ。
「あなた、日本人?」。ターミナルで、突然、日本語で話し掛けられて驚いた。非日系のその人は奥さんが日系人で、5年間日本に住んでいたという。「日本人のスーパーが近くにあるけど、行きたいですか」。
案内で訪れたのは、プレジデンテ・ベンセスラウで唯一、日本食材を扱っているスーパー「ハマダ」。商売の永続を願った鶴のマークが目立つ。「日本食材の売上げがここ5年くらいで3、4倍に増えた」と、経営者の浜田みちえさん(一世、80)は話した。
「ハマダ」の開店は1960年、同地で最初のスーパーだった。「主人がアルマゼンよりも大きくしたいといって始めてね」。86年に起きた火事にも負けず、今は1000平方メートルある店を息子とともに切り盛りしている。
みちえさんによれば、同地の日系人は300家族以上。ゲートボールが一番人気だという。「出稼ぎに行って覚えたのかしら。ふりかけや海苔の佃煮なんか、ブラジル人がよく買っていくのよ」。
「また来てくださいね~」。予期せぬ訪問だったが、いい人との出会いに心温まる時間となった。(稲)