ニッケイ新聞 2007年10月4日付け
ブラジル人の空手家フラビオ・ビセンテ・デ・ソウザさん(34)はサンパウロ市東部にあるビラ・カロン区でスポーツジムの一室を借りて沖縄空手の道場を開いている。沖縄少林流空手道沖縄古武道五段の免許を持ち、沖縄古武道神武会ブラジル支部の支部長を務め、小林流義昭道場で約九十人の門下生に古武道と空手を指導。沖縄県系人の間では「フラビオ先生」の愛称で親しまれている。昨年沖縄で開かれた第四回世界のウチナーンチュ大会にも参加。十一月十一日には沖縄県人会で第一回目の演武会を開催する。消防士という仕事のかたわら、週末には各地で空手古武道のデモンストレーションを披露するなど多忙な毎日を送るフラビオさん。沖縄に対する熱い思いの一端を聞いてみた。
八歳の時、学校でイジメにあった経験を持つフラビオさんは、父親に勧められて空手を始めた。その時、出会ったのが沖縄空手だった。
それから十年、練習を積んで、十八歳の時に小林流空手を教え始めた。古武道は二十九歳からだ。
現在までに五回日本を訪れた。最初は、九七年に沖縄から沖縄空手古武道大会への招待を受けた時だった。
「皆がとても優しかった」と当時の感想を語る反面、「日本の習慣になかなか慣れなかった。辛かった」と苦笑いしながら話す。
九九年に小林流空手大会に参加するため二度目の訪沖。三度目となった〇二年には空手古武道大会へ参加したほか、道場に通い稽古に励んだ。
〇三年には福岡県で沖縄空手古武道道場「重礼館」を開いている石橋満雄師範の道場で約三カ月間、稽古に励んだ。
そして、五度目は昨年の世界のウチナーンチュ大会に参加した〇六年。海外参加者からの一人として参加したが、日程の合間を縫って沖縄空手古武道神武会の本部がある川上哲雄師範の下で古武道の練磨に務めた。同年十月には神武会のブラジル支部設立許可が下り、ビラ・カロン区に現在の道場を開いた。
「今ある空手は試合や組み手ばかり行っており、門下生を増やすために商業化している」と現在の空手のあり方に危惧を表すフラビオさん。「本当の古武道の意味が消えている気がする。僕が大事にしたいのは古武道の文化を守り、伝えていくこと」と胸に秘めた思いを語る。
当面の目標は自分の道場を建てることだという。「自分が今あるのも先輩達の協力があったから、恩返しの意味で道場を建てて皆に道場を見せたい」と話し、「古武道や空手を通して沖縄との交流を強くしていきたい」と抱負を語った。