ニッケイ新聞 2007年10月9日付け
「疲労感だけで、達成感はなかった。白紙に戻させてもらいます」――。
「ブラジルを知る会」(清水裕美代表)がブラジル日本移民史料館と共催で先月二十九、三十日に行なった史料館カンパブックフェア。五日午後に行なわれた意見交換会で清水代表は、史料館運営委員らを前にきっぱりとそう言い切った。
今回八回目となる同会によるブックフェアは、昨年は事情により見送ったが、それまではサンパウロ人文科学研究所へのカンパを目的に開催され、毎回約一万レアルを寄付。良質の古本が揃うとして、コロニアの読書ファンからも呼び声が高いイベントだ。
今年も多くの人(購入者は四百七十九人)で賑わった。総売り上げは、九千七百三十七、一五レアル。純利益八千五百九十、三十五レアルを全額寄付した。
史料館では、今回の寄付に関して、今年七、八月にかけ開催された企画展「笠戸丸以前の渡伯者たち」で取り上げた葡和・和葡語辞典の編者、大武和三郎氏の常設展設置に充てたいとし、現在予算の見積もりを行なっているという。
史料館の収支は、約七万一千レアル(〇五年度)、約八万レアル(〇六年度)の赤字が続いている。委員長不在の状態が続いたのもこのような史料館の慢性的経営難があるからだ。
このような状況で一万レアルの収入は大きいが、知る会メンバーは「自助努力をするなど、もっと危機感を持ってほしい」と語気を強める。
ブックフェア開催までに四回ほど会議を開いているが、四月の選挙後、運営委員会の委員が決まらず、史料館側からは、大井セリア館長、JICAボランティアだけだったという。
「売上げが初めて一万レアルを切った理由は、知る会メンバーのモチベーションが下がったから」と見る。
ブックフェア初日の二十九日は、会場となった展示室の階上にある小講堂で評議員会が開かれ、上原幸啓会長を始め、理事らが出席したにも関わらず、会場を訪れ、労いの言葉をかける文協幹部はいなかったという。
ブックフェア直前の二十六日に就任(理事会で承認)したばかりの栗原委員長は「まだ状況が分からなかった。これからは態勢を整えていきたい」と話した。
清水代表は、「本の寄付で協力頂いた方には、お礼申し上げたい」と感謝の言葉を述べながらも、「現在の文協の体質として、やってもらって当然といった姿勢が見え隠れする。次回開催は考えていません」と厳しい態度を見せている。
赤字経営が続く史料館運営委員会を半年間も委員不在のまま放置した文協執行部。それに加え、コミュニケーション不足が今回の齟齬を生んだといえる。文協は、協力者に対する姿勢を問い直すべきなのかも知れない。