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米国共存が発展の近道=コスタリカは楽園=軍事費廃止、教育へ充当

ニッケイ新聞 2007年10月10日付け

 【ヴェージャ誌二〇二六号】コスタリカのオスカール・アリアス大統領は、第二次政権も残すところ一年余りとなった。同国は十月、米国との自由貿易協定(TLC)を結ぶか人民投票を行う。同大統領はTLCが、同国を発展に導く絶好のチャンスだと思っている。同国は独立して四〇年、政変もクーデターもないラテン・アメリカの模範国家である。経済的にも恵まれ国民の医療や教育も先進国並である。同大統領はコーヒー栽培者の家庭に生まれ英国へ留学、博士号を取得。一九八七年、ノーベル平和賞を受賞した。
 以下は、同大統領との一問一答である。
 【森林伐採と経済成長】未来の経済成長は、緑の保全が必須条件である。さもなければ、経済成長をあきらめるべきだ。緑は人類が地球に住み続けるための宝物である。
 コスタリカは、緑と共存し水と電気をリサイクルする小柄なエコーホテルを建設中。二〇二一年には、CO2ゼロを達成する最初の国となる予定である。乗用車や工場が排出する二酸化炭素を全部、森や藻で中和する計画だ。
 【ブラジルの教育向上のため】コスタリカでは学童を抱える家庭には、三〇ドルから一五〇ドルの奨学金を付与する。同国で引っ張りだこなのは、英語を話せる人である。企業は求人に際し、正しい英会話能力を要求する。同国では英語の教師が不足。英語教師は学校教師より高額給与を得ている。同国にはコール・センターが多数あり、大量求人を行っている。
 【ラテン・アメリカの武器密売】同地域の武器導入はチリーの戦闘機F16から始まった。すると次々と各国が、新鋭機の購入に走った。コスタリカは貧困撲滅の方法として、軍事費を教育と医療に充当した。軍隊は一九四八年、解散した。それまでの国民の生活水準は、中米諸国と同じく貧しかった。
 【任期中に変わったコスタリカ】重視したのが、経済成長と社会福祉である。国民の老齢年金は年々、増額し多くの国民をスラム街から解放した。米国に対しては常に一線を隔した。レーガン政権では、内政干渉に抵抗した。しかし、対米自由貿易協定は賛成。
 【米州自由貿易圏のメリット】数々のデマが、飛び交っている。しかし、それは国民の知恵によって克服できる。米国は最大の投資国であり、最大数の観光客を送り込んでいる。一時代以前は、コーヒーとバナナ輸出しかなかった。
 いまはマイクロチップスや観葉植物、医療器具、ソフトウエアなど多様化している。さらに欧米のコールセンターも、当地進出を計画中。市場開放によって輸出も年々、二五%増で伸びる。米市場にゼロ関税で輸出できることは、有利である。その相乗効果は、さらに大きくなる。
 【自由貿易圏協定が否決されたら】外資が去って行くので、経済成長率はささやかなものになる。承認手続きが遅れただけでも、損失は顕著である。Intelのチップス工場進出や半導体の生産計画が、流産しヴェトナムに持って行かれた。これは対米不信がもたらす損失である。
 【キューバは変わるか】ラテン・アメリカの民主化は、右翼独裁政権との闘争である。国民は、意思表示の解放で戦っている。結果からいうなら、米政府は民主化のために内政干渉をしないほうがよい。
 キューバの国民自身によって国の運命を選択させるのがよい。キューバは革命以来、五〇年になる。キューバ国民に質問する。カストロに政治を任せるか、国民自身が民主化を選ぶかだ。そのために、国民投票をさせるとよい。
 【ラテン・アメリカが目指すべき国は】ノルウエイやスエーデン、デンマークのスカンジナヴィア諸国。国民は高い税金を払っているが、国際競争力が損なわれる様子はない。
 韓国やシンガポールも素晴らしい。四〇年を経ずに先進国入りを果たす。しかし、ラテン・アメリカには五〇〇年経っても、先進国入りする国はありそうにない。理由は教育が行き渡らず、質が劣るからだ。