ニッケイ新聞 2007年10月10日付け
九日はキューバの英雄、エルネスト・チェ・ゲバラ没後四十周年だった。ブラジルマスコミは一斉にこの伝説的アルゼンチン人の記事を流した▼キューバ革命が成立した一九五九年に親善大使として訪日。広島市の原爆資料館を訪問した時に、「アメリカにこんな目に遭わされておきながら、あなたたちはなおアメリカの言いなりになるのか」と驚いた様子で案内人に語ったとの話は有名だ▼革命を〃輸出〃すべく秘密裏に潜入したボリビアでは、インディオを中心とする一般民衆から支持をえることができず、六七年十月八日に軍に拘束され、翌日射殺された。その翌年から、世界中で学生運動の嵐が吹き荒れるとは想像もしていなかったに違いない▼今ではその因縁の地ボリビアで、インディオから選出された左派のエヴォ・モラレス大統領が顕彰する時代になった。月曜の記念式典で同大統領は「チェのことを忘れたことはない。資本主義が続く限り戦い続けるという、彼が残した指針は、今も我々に受け継がれている」と雄弁に演説した▼ア・タルデ紙九日付けは「ゲバラの死から四十年を経て、南米は左派政権が武装闘争でなく、投票によって選ばれるようになった。六〇年代にゲリラたちの一部が夢見ていたような」と評した▼ところが、その英雄像は資本主義の権化、商品として消費されている。マラドーナの腕の入れ墨、人気Tシャツの柄になるほど〃民衆からの支持〃を集めている。しかし、トップモデルのジゼーリ・ブンチェンが着たビキニのお尻の模様となったゲバラの顔は、心なしか苦笑いしているように見えた。(深)