ニッケイ新聞 2007年10月11日付け
「一家(いっけ)にあたるっていうだけですよ」。そう謙遜して話すのは、福田義雄さん(73)。先月二十六日、初めて親子二代で総理になった故・福田赳夫氏、福田康夫・現内閣総理大臣と同じ家系に属している。群馬県群馬郡(現・高崎市)生まれで五九年に渡伯し、現在はピエダーデに在住している。「親族だって言って、まわりがうるさいんだよ」。はっきりとした話しぶりと屈託のない笑い方が明るい人柄を思わせる。「ここにいてよかったって思ってるんだから。首相に会ったって何も得はない」。義雄さんは自身の農場を子供に譲り、ブラジルでの生活を謳歌している。
「なんで皆知ってるのかね~」。義雄さんが赳夫氏らと親族だという話は、康夫氏が小泉内閣の時代に官房長官を務め始めたころから、ピエダーデで広く噂になっていた。
義雄さんは、ブラジル群馬県人会で唯一、福田の姓を持ち、赳夫氏と同じ群馬郡金古町足門で育った。「小さな町だったからさ、どこが親族かは皆知ってる」と義雄さん。赳夫氏らの福田家とどのように血筋がつながっているのかはわからないが、〃一家〃であることは確かだという。
赳夫氏が選挙のときには村総出での応援になり、義雄さんの兄は手伝いに走っていたが、義雄さんは「家が養蚕をしててさ。もう狭いところでゴチャゴチャしている日本が嫌だったから、興味もなかった」。そのためか、これまでに赳夫氏に会ったのは三回のみ。
一回目は、ブラジルに移住するため、その渡航方法を教えてもらおうと議員会館まで赳夫氏を訪ねた時。「(赳夫氏を前に)こりゃ、悪いことはできないと思ったよ。すぐに迷惑かかるからさ」。
二回、三回目は赳夫氏がブラジルに来伯した時だ。文協や県人会の歓迎会で会っている。「挨拶しただけ」。
赳夫氏は三度来伯しているが、初めてブラジルに来た際、「(赳夫氏が)県人会で『福田義雄はいるか』って聞いてたらしいんだけど、(自身は)県人会に行ってなかったもんだから会わなかったんだよね」と、その無頓着ぶりを暴露した。
康夫氏には「会ったことないよ。あっちはずっと東京だからね」。義雄さんは五九年に来伯したのち、ジャガレでの日雇い労働を経て、六五年にピエダーデへ。キャベツやレタスの栽培で成功した。「州に三百俵くらいずつサンパウロに運んでいたけど、もう今は息子たちがやってる」。
福田康夫氏の内閣総理大臣就任については「予想はできなかったけど、そんなにビックリもしないよ」と話し、来年百周年祭のときの康夫氏来伯の可能性があるのでは、との問いかけには「サンパウロは遠いからね。わざわざ出て(会いに)行けないよ~。ゲートボールもあるからね~」とさばさばと笑っていた。