ニッケイ新聞 2007年10月16日付け
パラナで日系女性初の州高裁判事が誕生――。九月五日付けパラナ州官報で、ロンドリーナ地方裁判所第二刑事法廷長官を務める前島リジア氏(二世)の同州高等裁判所判事(ロンドリーナ市FORUM長官)への任命が発表された。九月八日―十四日版のパラナ新聞が伝えている。アントニオ・ドミンゴス判事の定年退職にともなって決まったもので、日系女性としては初めての快挙となる。前島判事は同紙の取材に対し、「自分の成すべき事をして、立ち向かうことを恐れなければ夢はかなうもの」と喜びの声を寄せている。
パラナ新聞の報道によれば、前島判事は今回の就任に関して「州高等裁判所判事になることは私の夢で、すべての判事の願いでもある。今回の任命は神のおかげ」と語る。
また「自分としては司法界で立ち得る最高の地位を頂いたと考えている。しかし今後、ブラジリアの連邦高等裁判所から任命を受けることがあれば、その要請にも前向きに応えると思う」と胸の内を明かす。
同判事はパラナ州のアラポンガス市生まれ。五人の姉と一人の兄を持つ七人兄弟の末っ子。七〇年にロンドリーナ市に移り住み、八一年に同州立大学法学部を卒業した。
ニッケイ新聞社ロンドリーナ通信員の中川芳則さんによれば、前島判事の父親である孝通氏は茨城県出身で、一九二四年、五歳のときにハワイ丸で着伯した。パラナ平和友の会の創立会員で、〇〇年に愛妻、福寿さんを亡くした。
同判事は大学卒業後、姉の弁護士事務所で働き、八四年に約三千五百人の候補者の中から十五人の判事の一人に選ばれた。これまでウニアン・ビットリアやフォス・ド・イグアス、ゴイオエレ、カスカベウ市など同州各地の裁判所で判事を歴任。九四年からロンドリーナ地方裁判所長官として任務についた。
判事としてのキャリアは二十三年。職業柄かピストル強盗などの恐怖を感じはじめるようになった。「神のご加護もあってこれまで危険な目にはあっていない」と言うが、司法研修生には「一度判事になったらリスクが伴うことを知らなくてはいけない」といつも聞かせているという。
また「人間的に問題がある人や場をわきまえないで振舞う人はどこの社会や階級でもあること」との認識から、社会的貧困者の犯罪を扱う場合でも、十分な審理をもとに判決を下す。
前島判事は九二年に外務省の招待で訪日している。その際に皇太子さまに謁見した。一カ月の滞在中、日本各地の市町村を訪問。そのなかで「ガイジンとしての自分を強く感じた」と振り返る。
一方で「日系ブラジル人としての自分を誇りに思う」とも強調する。「ブラジルへ来ることを決断した先人の日本人移住者に感謝の気持ちでいっぱい。私にとってブラジルは最高の国。生まれ変わるならブラジル」と同紙のインタビューで強調している。