ニッケイ新聞 2007年10月16日付け
ブラジル日本都道府県人会連合会(松尾治会長)主催の「第二十八回移民のふるさと巡り」が、去る九月二十七日から十月三日までの六日間で行われ、旅程約三千キロを事故もなく走り抜けた。今回は日伯ナショナル・プロジェクトの中心として、日本人とも関わりの深い、エスピリト・サント州とミナス・ジェライス州を訪問、各地の日系人と交流を深めた。日伯の繋がりの強さを再認識させられた旅の軌跡を振り返る。(坂上貴信記者)
九月二十七日午後六時半頃、リベルダーデ広場にふるさと巡り参加者たちがぞくぞく集まってきた。「今回も楽しい旅にしましょうね」と、顔馴染の参加者同士が挨拶を交わしていた。
今回の参加者は八十四人。七時半頃に無事出発した。一行はサンパウロからリオへと抜けるドゥトラ街道、リオからエスピリト・サントへと続くBR101を通り、約九百六十キロの道程(約十六時間)の移動を終え、最初の目的地、同州州都ヴィトリアに到着した。
ヴィトリアのホテルで少しの休憩を取った後、最初の訪問地、ツバロン製鉄所(Arcelor Mittal Tubarao)を訪れた。同所内にある社員食堂で昼食を取った後に、見学が行われた。
ツバロン製鉄所は、一九八三年に日本(川崎製鉄グループ)、ブラジル、イタリアの三カ国の共同出資によって始まった工場。現在はインド資本になってはいるが、職員教育などのシステムは日本式を用いている。
同所内の従業員は四千人で、工場内で働いている人たちは合計で八千五百人。面積は千三百万平米(マラカナン球場約八百個分)の広さがある。
一行は自然保存教育場(Centro Educacao Ambiental)へと移動し、学校や大学で環境教育の一環として行われている、同所の紹介ビデオを見た後、宣伝部のマノエラさんから同所内の説明が行われた。
ツバロン製鉄所は、環境を壊さずに発展していくことを目標にしていて、人間と自然の共存を重視している。現在でも日本は技術協力を行っている。
説明が終わった後には、バスに乗って工場内の施設の案内を受けた。なかなか製鉄工場を見学することがないために、見るもの全てが新鮮なようで、指を指しながら喜んで見ていた。
精製した鉄を冷やすために使用されている海水を排出している辺りを通り掛かった時に、参加者から「あ!?タルタルーガだ!」との声が上がった。海水温度よりも五度ほど高いために海亀がよく訪れると、マノエラさんから説明が行われた。
海亀の出現もあり和やかな雰囲気のまま、見学会は無事に終了した。一行はホテルへと帰って行き、疲れた体を少し早い時間から休めることにした。(つづく)