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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2007年10月19日付け

 二言語を使い分ける人のことを「バイリンガル」というが、二つの文化を使い分ける人を「バイカルチャー」という。ポ語ならビクルトゥラウ(2文化)だ▼日本人は相手によって文化を使い分けることにあまり慣れていない。島国であり、基本的に同一民族、同一言語という世界的にも稀な条件ゆえに使い分ける必要がなかった▼加えて「まじめさ」や「裏表のない人格」「うそをつかない」などの日本人としての美徳が、使い分ける生活習慣を形成するには不向きだったようだ▼しかし、争乱の絶えない欧州大陸から来た移民たちにとって、場面や相手によって文化を使い分けることは当たり前だった。適切な表現方法を選んでいかないと不利な状況を招くことがある▼事実、ドイツ系有名コレジオのポルト・セグーロ校はもちろん、アメリカンスクールのサイトを見ても学校の特徴として「バイカルチャー」をしっかり謳っている▼しかし、ある日系コレジオで子供を育てた母親が「自分の子供は、日本の影響を強く受けすぎて文化的な奇形児になってしまった」と嘆いていたのを以前、聞いた。子供が兵役に行って夜空を見上げている時に、日本ではお月様にはウサギが住んでいるという伝説があるとの話を披露して、ブラジル人仲間から薄気味悪がられ、苛めの原因になったとの話だった▼これはバイカルチャーの発想が不足していたのかも、と思い当たった。日系らしさを維持しながらも、エリートブラジル人に伍して自己主張して出世して行くには、日本語教育だけでなく、バイカルチャーの考え方も必要かもしれない。(深)