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デカセギ問題に長期的取り組みを=CIATE=15周年式典で気持ち新たに=二宮理事長「通過点に過ぎない」=セブラエと協力覚書

ニッケイ新聞 2007年10月23日付け

 国外就労者情報援護センター(CIATE=二宮正人理事長)設立十五周年記念式典が十九日、シンポジウムが二十日にサンパウロ市内ホテルで行われ、連日百二十人以上が熱心に詰めかけ、日伯両側の政府関係者や学者ら九人による最新のデカセギ情勢などに耳を傾けた。最後には、元日本代表サッカー選手の呂比須ワグナー氏による日本での興味深い体験談が語られ、丸一日の長い聴講にも関わらず、始終会場はいっぱいで、同センターの設立意義を改めて確認した。
 十九日午後六時からの式典では、ブラジル外務省に今年一月に新設されたばかりの在外コミュニティ課からレオナルド・カルヴァーリョ・モンテイロ参事官が出席し、「在日コミュニティがよりよい対応が受けられるように、我々も力を注ぎたい」とあいさつした。
 演壇にたった在聖総領事館の西林万寿夫総領事は、十二月二日から日本方式のデジタルTVの試験放送が開始される点や、着任以来、国会議員が三十人以上来伯し、うち閣僚が六人だったとの数字をあげ、「日伯の確実に結びつきが強くなっている」と語り、「これまで以上に活発な活動を」とのCIATEへの期待感をのべた。
 海外日系人協会の塚田千裕理事長も、駐伯大使時代の経験を踏まえてデカセギ時代の到来を「大きなチャレンジ」と位置づけ、永住権取得者が増えている現状に対し、「日本の生活に納得している人が増えている」と分析し、続いて文協の上原幸啓会長もあいさつした。
 続いて、厚生労働省大臣官房国際課長の南野肇氏が記念講演した。
 二宮理事長は、三十一万人というデカセギの人口はサンパウロ市近郊のジュンジアイー市より多いとし、雇用不安定、社会保険未加入、年金問題、子弟の教育問題など「まだまだ取り組まなくてはならない課題は多い」と語り、「今後、十年十五年たってもまだ論じられ続けるだろう」とCIATEの存在意義と長期的な取り組みの必要性を訴えた。「十五周年は通過点に過ぎない」。
 来賓のウイリアム・ウー連邦下議は「日系二世の議員として、伯日議連を通して問題解決に注力していく」と力強く語った。
 その後、関係諸団体や個人、講演者への感謝状の贈呈が行われた。
 最後に、CIATEとSEBRAE(ブラジル零細・小企業支援サービス)サンパウロ支部間の協力関係を締結するための、事務レベルで検討を開始する覚書に調印が行われた。同支部のミルトン・ダライ財政担当役員は「これを機会により日系コミュニティと手を組んでいきたい」と抱負をのべた。
 夕食会の会場で、南野氏より、舛添要一厚生労働大臣からの表彰状が渡され、拍手で貢献が讃えられた。

外国人雇用安定に法整備=日本政府の取り組みを講演=厚生労働省大臣官房国際課長 南野肇氏

 式典会場では、厚生労働省大臣官房国際課長の南野肇氏が「日系人就労者の現状と十五周年を迎えたCIATEに期待すること」をテーマに記念講演をした。
 八七年から九〇年まで在聖総領事館で経済担当領事として勤務した経験のある同氏は、ブラジルを「第二のふるさと」のように感じており、移民八十周年がパカエンブー蹴球場で盛大に祝われたのを体験しており、「十五年ぶりに帰ってこれて胸がいっぱい」と語った。
 九二年に文協の一組織として設立されたCIATEの経緯を振り返り、「安定した就労経路の確保に大きな功績を残した」と高く評価。現在は約三十一万人のブラジル籍者が在留しており、九二年には二百二十人しかいなかった永住資格保持者が、〇六年には七万九千人に激増している数字をあげ、「日本定住傾向が強まっている」と分析した。
 昨年十二月から、適法滞在の就労外国人の生活環境整備のための総合的な取り組みが始まっており、今年二月三月には外国人を多く雇う企業に雇用管理改善の指導も行うなど、「厚生労働省として積極的に取り組んでいる」と報告した。今年十二月からは「さらに強化して行う」とも。
 外国人雇用の基本ルールを定めた「改正雇用対策法」が六月の国会で成立し、十月一日から施行されているという。「外国人の雇用安定を国の雇用対策として明確に法律として位置づけた」ものだという。主な改正点は次の三点。
 1)外国人雇用状況の届出制度を作った。2)外国人雇用企業への助言や指導を行う。3)ハローワーク(公共職業安定所)は離職外国人の知識や経験を踏まえて適切な再就職の紹介をする。
 親の雇用不安定が子供の不就学につながっている現状を踏まえ、外国人子弟の教育や社会保険加入促進なども考え、「政府一体となって取り組んでいる」という。
 最後に、来年百周年を迎える百四十万日系人が勤勉、誠実、協働の精神を実践し、それがブラジルにおける日本のイメージの基礎となったと評価し、「両国のかけ橋として日系人は大きな貢献してきた。その日系人が来日することで新しいかけ橋ができている」と締めくくった。