ニッケイ新聞 2007年10月25日付け
【藤崎康夫東京支局長】画家の故・間部学氏の生まれ故郷、熊本県宇城市不知火美術館で、ブラジル移民百周年記念として、マナブ間部展が九月十九日から十月二十八日まで開催されている。
明るく広々とした空間に、初期の具象画から始まり、鮮烈な色彩と躍動する感性溢れる「マナブ間部」の世界を堪能させてくれる展覧会となり、まさに百周年記念に相応しい一大イベントとなっている。
海上に現れる「神秘な火」で、その名を知られる不知火町は、農業と漁業、そして醸造の盛んな町。学氏は同町で旅館を営む間部家で一九二四年に誕生し、十歳まで同地で育った。
三四年に一家は「ラプラタ丸」で渡伯、サンパウロ州の植民地に入植後、リンス管内でコーヒー園を営む。学氏は好きな絵筆を握り、やがてその才能をいかんなく発揮し、五〇年にサンパウロ作家協会展に初入選。五九年の第五回ビエンナーレ展では国内最高の賞を大統領から受けた。
その後も数々の賞を受け、欧米をはじめ母国日本の各地で個展を開くなど、世界の画家として活躍。母国日本とブラジルとの大きな架け橋でもあった。九七年に死去。
今年はまた、熊本市内の画廊「ギャラリー武智」でも遺作展が開催された。
五一年以来、同氏と共に歩み続けてきた、よしの夫人も不知火美術館とギャラリー武智を訪れ、懐かしい夫の作品に再会。また、学氏の念願であった日伯両国の文化の架け橋へ熱い思いを語った。熊本でも、「夫人のこの思いを生かさなければ」という賛同の声が高まっている。