ニッケイ新聞 2007年10月26日付け
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十五日】リオデジャネイロ州のセルジオ・カブラル知事(PMDB=ブラジル民主運動党)は二十四日、スラム街の幼い母親による産児無制限が犯罪予備軍養成につながると述べた。彼女らは、生まれてくる幼児の生活設計や家庭の団らん、経済的余裕、公的機関の家族計画指導も何もない。これは同知事が、リオ州の犯罪抑制に妊娠中絶合法化の必要性を訴えたものとされる。ブラジルには、スエーデンのような優雅さとアフリカのような赤貧が混在すると公言した。
カブラル知事は、犯罪抑制に妊娠中絶が不可欠であるという。ブラジルには、二つのタイプのブラジル人がいる。金持ちと貧乏人だ。個人的にはクリスチャンで妊娠中絶の賛成論者ではないが、米国で一九七三年の中絶合法化が、九〇年代の犯罪減少につながったと証明されたという。
女性は、望まない妊娠を中絶する権利がある。この見解を明言できる勇敢な政治家がいないのは、残念である。この見解にちゅうちょしダラダラ延ばしたことが、深刻な結果を引き起こした。犯罪の世界では、何でもありである。
金持ちの娘は、豪華な産院で密かに安全な中絶ができる。スラム街に住む未成年で経済力もない少女らは、どこで胎児をおろしたらよいのか。有識者らは、分かっていない。スラム街の小さな母親が、犯罪予備軍を育てているというと、偏見だ、誤解だと批判する。
犯罪予備軍まで政府の目は、届かない。小さな母親に、中絶の機会を提供する公立病院はない。欧米でしていることが、なぜブラジルはできないのか。統計によれば、全国で年間一〇〇万人の妊婦が公立病院を訪ね、不本意な妊娠に満足な応対を受けていない。
一方、カンジド・メンデス大学のレングルベル社会学教授は、カブラル知事の「中絶と犯罪」論を偏見だと糾弾した。貧乏人の子が、犯罪人になるという説に反論した。また人類学のザルアル教授は、貧困度では北東伯地域のほうが貧しいが、それが犯罪につながった例はないという。
クリヴェラ上議(PR=共和党)は、アフリカに住んだ経験がある。アフリカは全員が極貧なので、犯罪に発展しないという。ブラジルは所得格差が、麻薬浸透の原因を作っていると同上議は見ている。だから貧乏即犯罪の構図は、誤解だというのだ。