ニッケイ新聞 2007年10月30日付け
【BBCブラジル通信二十九日】アルゼンチン大統領選は二十八日、キルチネル大統領夫人のクリスチナ・キルチネル上議が四二・五%を獲得し第一次投票での当選が確実となった。一世を風靡したエヴァ・ペロンほどのカリスマ性はないが、アルゼンチンの選挙で選ばれた初めての女性大統領に就任する。これからのクリスチナ亜政権を取り巻く中南米情勢を語るため、ルーラ大統領はヴェネズエラのチャヴェス大統領へ首脳会談を呼びかけた。
アルゼンチンの選挙制度では、一位が四〇%以上の得票率を獲得し、二位と一〇%以上の差があれば当選が決まる。クリスチナ・キルチネル上議は、条件を満たした。同上議の当選でキルチネル現大統領の路線継続はほぼ確実と見られ、中南米はブラジルを囲んでアルゼンチン・ボリビア・ヴェネズエラの共同前線が張られるらしい。
ルーラ大統領は二十八日、亜新政権について協議するため伯ヴェ首脳会談の開催を申し込んだ。クリスチナ次期大統領は、選挙公約でブラジルの工業政策を亜国のモデル・ケースに取り入れると宣言した。特にエンブラエルの発展は、ブラジル工業化の象徴的存在だと見ている。
しかし、亜国内では現キルチネル大統領の物価統制政策で多くの伝統的大企業が経営不振に陥り、ブラジル資本に身売りをしたことで非難が渦巻いた。亜国の有識者は、工業政策の不在を激しく訴えた。その事実に次期大統領は、そ知らぬ顔で押し通した。
亜国の歴代大統領からブラジルの経済政策は、理想の政策として賞賛を浴びた。特にゲイ前亜中銀総裁は、ブラジルの経済政策は長期政策に基づき、安定経済を目標に掲げたことが正解であったと評した。一方、亜国は場当たりで大衆迎合に基づき、持続性がないと批判した。
ラバーニャ前財務相は、ブラジルがメルコスルの重要なパートナーだが、亜国は歩調を合わせず独自路線を歩み、亜ヴェ同盟へ傾き将来が懸念されると慨嘆した。亜経済は放漫な公共経費と野放しのインフレ政策で、チャヴェス大統領に頼っているという。
一方、次期亜大統領は、チャヴェスをないがしろにするのは、プーチン抜きでEUを論じるようなものと皮肉った。ヴェネズエラとボリビアは亜国の有力な切り札であり、米国も両国のエネルギーを必要とすると次期亜大統領はいう。次期亜政権は、夫時代よりも現実路線を採ることになると宣言している。