ニッケイ新聞 2007年11月02日付け
アメリカのロサンゼルスで三十年以上にわたって生活し、和太鼓の普及と公演活動に励む本郷悦雄さん(53、東京都出身)が、本格的なブラジルへの移住を決めた。「ブラジルにはまだ可能性がある。もっと太鼓を広めていきたい」。本郷さんはアメリカでの生活を全て引き払って来伯し、今後はコロニアでの太鼓指導に尽くしていきたい意向だ。
本郷さんは一九七三年に渡米、アメリカで五つ目となる太鼓チームをロサンゼルスで立ち上げた。現在北米で二百五十から三百の団体があるが、その先駆けとなる存在だった。五つの太鼓グループを指導をしながら、アメリカ国内各地での公演活動も行ってきた。
二年前よりブラジルを訪れ、新しい活動の拠点として、下見。構想から含めると「四年がかりの計画」でブラジルへの滞在を決めた。
「ここ(ブラジル)で、いろんなグループを見て廻ってきたけど、どこに行っても太鼓で大切なところ、基礎がわかっていない」と本郷さん。
「アメリカでは、和太鼓がすっかりアメリカナイズされてしまって、太鼓がただ叩くだけの楽器になってしまっている」のに対し、「ブラジルでは、日本のやり方に根付いた太鼓を求めてやっている」。だからこそ、ブラジルの太鼓を普及する上で「和太鼓の基礎である、マナー、音の出し方、立ち位置、腕の上げ方などをしっかり学んでもらいたい」。
本郷さんは「日本のやり方をそのまま押し付けるのはよくないが、まず基礎があって、その後ブラジル人の感覚を活かして発展していく形が理想的ではないか」と熱意を述べた。
基礎は短期間では身につきにくい。本郷さんは現在、クリチーバ、ロンドリーナ、アチバイアやオザスコなど各地を回って現状を視察、滞在しながら長期指導ができる場所を探している。
本郷さんは「ブラジルには太鼓連盟がある。連盟と協力して良いものを広げ、ブラジルでの太鼓の普及につなげたい」と抱負を語っている。本郷さんへの連絡は11・8706・0992まで。