ニッケイ新聞 2007年11月02日付け
日本囲碁界の一大行事、第三十二期囲碁棋聖戦第一局が、来年早々、サンパウロ市内のホテルで開催される。十七年ぶり二度目である。移民百周年の年の日伯交流事業の劈頭を飾るイベントと位置付けられている▼主催者の読売新聞社、日本棋院、関西棋院の意図は「日本に囲碁という伝統文化あり」を海外に広く知らせることにある。その意味で、サンパウロやブラジルにもっと多くの囲碁愛好者、ファンがいればいいのだが、現状では満足できる数字をあげることが出来ない▼主催者側は、大きな棋戦(五番勝負や七番勝負)の第一局を海外で行うようつとめており、今回は、百周年もあり、最も遠い、最もお金がかかるブラジルが選ばれた。囲碁ファンにとっては、子供時代正月を待った心境に違いない▼棋聖戦を迎えるサンパウロ側団体は、今回も日本棋院南米本部である。粗漏なくすすめると思われるが、少し残念なのは、いい意味でイベントに首をつっ込んでくる地場の団体が存在しないことである。特に宣伝媒体が強力でないのは物足りない。これは、囲碁の普及度、知名度、関心度がいま一つだからであろう▼ともあれ、準備はホテル内に畳の部屋を特設、から始まる。金屏風や脇息(きょうそく)が要る。碁石はブラジルにある個人所蔵のものを使用するが、碁盤は日本から持ち込まれる。このように、こだわるのは囲碁が歌舞伎や大相撲と同様、日本古来の伝統美を尊んでいるからだ。こういうこともブラジル人に伝えたい。(神)