ニッケイ新聞 2007年11月07日付け
温暖化、京都議定書と騒がれ、アマゾン破壊が温暖化に大きな影響を与えていると警告されながら、「アマゾンはわれわれのもの」(六月八日エスタード紙)との大統領発言にあるように、自国の益第一に、責任逃れをしてきたブラジル。その現実は、温暖化防止の対策の遅れを招き、未だに世界第五位の温暖化促進国の汚名を晴らせずにいる。
六日付エスタード紙にはサンパウロ総合大学ゴールデンバーグ教授による計算で、ブラジルの二酸化炭素ガス(CO2)排出量は二〇〇六年中に一一億四一〇〇万トン、そのうち森林伐採や焼失によるものが八億五五〇〇万トン(七五%)という記事があるが、環境省の気候変化の担当者は、森林破壊が二酸化炭素ガス排出量の七五%という数字は一九九〇年から九四年にかけての数字と同じだという。
これに対し、九月十九日付サンパウロ新聞には、森林消滅による二酸化炭素排出量は化石燃料によるものも含めた総排出量の二〇%が一般的とある。つまり、ブラジルの森林破壊による二酸化炭素排出量は、世界一般のそれよりはるかに高い。森林破壊ゼロになればブラジルは一八位まで下がるというゴールデンバーグ氏の計算もうなずける。
国内の森林破壊の大部分は、農業、牧畜用地への転換によるもので、火事や焼畑による焼失は、二酸化炭素以外の温暖化ガスも排出する。その意味で、五日付エスタード紙のマット・グロッソ・ド・スルの帝人農場で、定住した土地なし農民が保護林を伐採し、炭焼きをしていたという記事は色々な意味を伴う報道であったといえよう。
十月には、環境相が「森林破壊の減少は地球を助ける」と発言したことが政府の姿勢の変化だという報道(十月二十六日付エスタード紙)や、森林破壊進行阻止のために国軍が協力することになったという報道(同二十七日フォーリャ紙)など、今後のガス削減ならびに今年に入り加速化した森林破壊を防止するための取組みがどのように進められるか、見守りたい。
なお、森林破壊だけではなく、チエテ川流域などで一万ヘクタールの植林(十月二十七日本紙既報)のような事業の推進や節電も温暖化防止の一助である。世界二一カ国でのアンケート調査で、八三%が温暖化ガス減少のために生活スタイルを変える必要があると考えているという(六日付フォーリャ紙)が、毎日の小さな工夫も大きな結果となる。
ちなみに、二酸化炭素ガス排出量のトップは米国、以下、中国、ロシア、日本と続いている。