ニッケイ新聞 2007年11月08日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙七日】連邦警察は六日、スイス系UBS銀行の幹部行員と米系AIG銀行の役員を含む一九人を違法送金と資金洗浄の容疑で拘束した。違法送金のシステムは、国内五州にまたがり、取り扱い金額は一〇億レアルに上ると見られている。UBS銀行の幹部行員は、顧客らが指定した為替両替人を通じてスイスの銀行口座へ振り込むよう指導していた。同両替人は、中央銀行へ報告せずに別ルートから送金をしていた。
連警の内偵は、二〇〇六年から始まった。摘発された金融機関は中銀に銀行として登録されておらず、駐在事務所として活動、ブラジル人顧客の資金を国外へ送金していた。送金方法は、足跡を残さないため実態を把握できなかった。連警には、新手犯罪だ。
UBS銀行とAIG銀行は、ブラジルの資産家を募るため幹部行員を派遣した。同行員は、資産家がシステムの説明を受けるため指定両替人を訪ねるよう指示した。指定両替人数人は、同幹部行員から指導を受け、スイス銀行へ暗証番号で別ルートから前以ってドル送金をした。
ブラジルでは違法行為として禁じているが、スイスを初め暗証番号による送金を合法行為として認めている国は多数ある。こうすれば、中銀に全く知られず海外へ送金ができる。脱税などで表に出せない資金は、このルートを使って国外に隠蔽することができる。
幹部行員は、本社の指令で同システムによりブラジルから資金を集める特命があったようだ。この幹部行員は、三カ月毎にブラジルへ入国し、資金の回収状況を観察し毎月、七〇〇万ドルを動かしていた。この方法で商売をする業者は、無数にいるらしい。それなのに連警は、違法送金を盗聴やEメール、ファックスなどで捜索している。時代遅れも甚だしい。
検察庁は早速、拘束した十九人の資産明細を調べる。同システムの顧客は、ブラジル一流企業のオーナー・オンパレードだ。拘束された幹部行員のスイス人は、ブラジルは金持ちの国だから、金持ちは何をしても咎められないという。犯罪防止とか警察、裁判所は飾り物に過ぎないと現行制度を嘲笑した。