ニッケイ新聞 2007年11月08日付け
今年後半になって、来伯する日本の新聞記者が急に増えた。これほど立て続けにくるのは異例だ。七月から毎月、静岡新聞の記者が三人短期来伯したのを先駆けに、九月には愛媛新聞記者が一カ月、十月からは河北新報記者が一カ月滞在し現在も取材中だ▼さらに共同通信記者もカメラマンと共に来聖、十日間程度取材した。その他、全国紙やNHKなどのテレビ局も企画を検討していると聞く▼極めつけは今月特派された高知新聞記者だ。「できるだけ来年の式典までいたい」との意向を聞き驚いた。かつて、地方紙でこれほど長期間にわたって取材体制をとった新聞社を知らない。しかもデカセギがほとんどいない地域の県紙であり、県出身移民を中心に取材するという意味でも興味深い▼地方紙といえば九二年、中国新聞が創刊百周年記念企画として全世界の広島出身者を連載ルポし、『移民』として出版して高い評価をえた。全四百七十頁中、六十頁をブラジルに割き、当時ブームになったばかりのデカセギ問題にもいち早く触れて、今もなお読み応えがある▼この当時、ブラジル内のコロニアの空洞化が主たるデカセギ問題という意識だったが、現在ではむしろ日本の国内問題と化した。フランスはパリ近郊での移民の暴動、米国内のヒスパニック系を中心とする大規模なストライキなど「移民」を取り巻く世界的状況は大展回している▼グローバル化が進展した今、「日本移民」というローカルな存在を深く掘り下げることで、逆に世界に通用する企画ができる時代なのかもしれない。「移民とは?」各社の取組みの成果を楽しみにしたい。(深)