ニッケイ新聞 2007年11月09日付け
ブラジル在住の日本人高齢者にいくつかの県が贈り続けてきた敬老祝い金。支給打ち切りが続いて、愛知県とともに〃最後の砦〃になっていた宮城県もついに来年から支給をやめる可能性がでてきた。受けるブラジル側にとっては、残念な話だが、日本側の現実を考えると、いつまでも「ほしい」とは言っていられない▼敬老祝い金は、毎年の「敬老の日」を記念した、日本の地方自治体(各県)の「海外在住者にも日本並みに」を配慮した、いわば厚意であった。多方面にわたる改革の必要に迫られ、行政は支出削減が至上命令、不要不急と判断された予算は、軒並み削られている。敬老の日の祝い金などは、各県において一番先に切られた▼今、日本における高齢者の金銭的負担は増えつつあるのが現実だ。低所得層にあたる高齢者は、日々の生活に余裕がなくなっていくのを、身をもって体験している▼日系社会の団体は、すでに気づいているだろう。日本政府、あるいは各県からのいわゆる「招待」が、ひところと比べ激減していることを。県費留学生、技術研修員(の招聘)といえども例外ではない。以前、下本八郎サンパウロ州州議が現役のころ、日本の行政に対し「ブラジル在住一世に対する高齢者年金」の支給を要請していた。これは夢だった▼いま、筆者の隣にいる日本の学生が言う。「(二十歳になったので)国民年金の掛け金を納めている」。そうでなくては、将来の受給に響くというのだ。意識改革が若者にも行われている、と思う。(神)