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年間180万人の命を奪う=食の汚染にもっと注意を

ニッケイ新聞 2007年11月13日付け

 何年か前に、サンパウロ市内のパン屋で店の中の掘りぬき井戸から取った水で食器を洗い、パン生地を作っていたという報道があった。また、先月は、牛乳の薬品混入事件、今月は牛乳の成分が記載されたものと大きく違っていたという報道があったりもした。
 世界保健機構(WHO)の報告(十一日付エスタード紙)によれば、世界中で一八〇万人もの人が、何らかの理由で汚染された飲み物や食べ物による問題で命を落としているという。意図的なものか否かを問わず、毎年二〇〇件以上の問題摘発がなされているというのだから、国の内外を問わず、食品の安全はクローズアップされているといえる。特に、ブラジルのように、他国との広い国境地帯を持ち、輸出入も行っている国では、自国内の基準だけを満たせばいいというわけには行かず、他国から入ってくるものにも神経をとがらせなければならない。EU諸国でブラックリストに入っている品物もあるというブラジルでは、食の基準つくりとその遵守は大きな課題といえる。
 そんな中、十一日の報道をはさむような形で、十日には、エスピリト・サント州(ES)で、ミネラル・ウォーターの監査で七つの企業が営業停止、操業停止の処置を受けた報道、十二日にはサンパウロ州の精肉店に下ろされている肉の五〇%は正規のルートで入ってくるものではないとの報道(いずれもフォーリャ紙)があった。また、先の十一日付エスタード紙には、牛乳の成分調査の結果、成分表より実際の製品の成分値(乳脂肪他)が二〇%以上低かったメーカー(マラジョアラ)の指摘があった。
 牛乳の薬品混入については、農務省が監査体制を変更・強化し、新体制による監査を既に始めたが、ESの水の問題では虫の糞や錆が検出されたり、監査を受けていない水源からの水が詰められていた例もあった。また、アサイのジュースがシャーガスの病原とされて監査が厳しくなったのも最近のこと。オレンジジュースやトマトピューレに傷んだものも使われていたといった例もある。
 材料の安全・衛生管理、搬送時の衛生管理、包装材の厳選(ロンガ・ヴィダ牛乳や缶ジュースではアルミの害報告もある)、消費期限の厳守など、消費者だけでは届かないことも多く、企業、行政、消費者の意識改革も含めた取組みが待たれる。毎日の食卓が力のもとではなく、命を絶つもととなったのでは、健全な生活はありえない。