ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 東北伯で続く深刻な水不足=待てど暮らせど来ぬ国家援助

東北伯で続く深刻な水不足=待てど暮らせど来ぬ国家援助

ニッケイ新聞 2007年11月14日付け

 洗面用水や尿から飲用可能な水を分離し、回転させるというのは宇宙飛行士を送り出す先進国。ここブラジルでは、飲み水すら確保できず、水質どころではないと言う状態の人々がいる。
 十月以降の雨で一息ついた地域も多いが、今も給水車すら回りきらず、困窮する地域が東北六州。緊急事態に陥っている自治体が、政府にも報告されているものだけで三八〇(全六五二自治体中)に及んでいる(十三日エスタード紙)。
 そのような地域の一つ、ピアウイ州(PI)。二二三の自治体中、一五〇が緊急事態宣言。州政府は連邦政府に働きかけ国家予算の開放を求めたが、給水車契約等に要する三二〇万レアルの資金要請は四カ月たっても応えられず、一〇〇万人が飲み水にも事欠いている。PIでは軍と州政府が共同で給水活動をしている(他州では軍が担当)が、給水車出動地域は、一〇三(四六が軍、五七が州政府)の自治体のみ。
 また、農地の灌漑用水も当然不足しており、州の農業生産者組合では、今週中にも州政府に家畜用のえさを買うための貸付金の要請をする予定。「牧草もなく、一部地域では気温も四五度になる状態では家畜も死んでしまう」という。
 現状打破のための井戸も掘られているが、地下水汲み上げの機械設置などに三〇〇万レアルかけても一〇〇の井戸にしか機械は設置できない。近所で掘った貯水池の水で家族五人が暮らすというオドンさん(三二)いわく、水は「飲用と食事の準備、洗面用に使うから大切にしないと」とのこと。十カ月の末っ子の入浴のことは話に出ても、大人の入浴や水をまいての掃除などと言う話は出てこない。内職をしながら何とか食べている状態でもある。また、貧困扶助のおかげで生き延びていると言う別の家族も近くの池まで毎日水を汲みにいく。もちろん水質の保証はない。
 人口三万のトウロス市でも六〇〇家族や家畜に水がない。近くの町までは水源地からの水脈が伸びており、水があるが、トウロスではその支流がない。市や州への働きかけはしてきたが、国の援助は六年以上たっても下りず、町には一台の給水車もない。
 PIで一日も早い国家援助をと書類作成に追われる州の担当者は、一つでも書類不備があればつき返され、審査はちっとも進まないとも嘆いてもいる。国が大きすぎて動かないのか、国民の痛みがわからなくて動かないのか。温暖化の影響で、異常乾燥等の問題は続きこそすれ、絶える事はない。未だ温暖化防止や森林破壊防止に効果的な方策の取れない政府だが、せめて、死活問題には速やかな対処が望まれている。