ニッケイ新聞 2007年11月17日付け
ルーラ大統領は十四日、ベネズエラに欠けているのは対話であって民主主義ではないと、チャヴェス大統領支持を表明したとフォーリャ・デ・サンパウロ紙が報道した。民主主義以外のことなら、同大統領を批判してよい。ウソを、でっちあげてもよいという。
チャヴェス大統領は、三回の選挙でみそぎを経ている。今度は四度目で、何のための人民投票か解せないと、大統領がイタマラチーの式典で述べた。ベネズエラはいま、大統領の無期限再選を容認するかの憲法改正で揺れている。
チャヴェス大統領とスペインのフアン国王との口論は、ありきたりのことで特記することではないという。「黙れ」といったのは国王であり、我々のような口論が日常茶飯事の平民ではない。口論の習慣がない、篭の鳥の王様ならではの出来事に過ぎない。
君主制議会政治と大統領制議会政治の相違はない。前者がいつでも政権当事者の首をすげ替えられるだけで、単なるルールの違いに過ぎない。チャベス大統領は、前者のルールを導入しようとしただけだと、大統領は見ている。
大切なのはルールの変更ではなく、権限の活用法だ。権限の活用で国民の納得が得られれば、ミッテラン仏大統領やコール独首相のように、長期にわたって政権に留まっても不思議ではない。チャヴェス大統領は昨年十二月、再選で六二%の支持を得た。
チリーにおけるイベロ・アメリカ首脳会議でのハプニングは、民主政治の慣わしに過ぎない。民主主議の国では、全ての人間に意思表示の権利がある。相手によっては、いいたいこともいわず遠慮しなければならない規則などない。
ただチャヴェス大統領の場合、相手は世間を知らない雲上の人だから、一国の大統領や首相と口論するのとわけが違う。チャヴェス大統領は、世界の首脳へ八つ当たりをした。我々に激論やつかみ合いは珍しくないが、国王には刺激が強過ぎたらしい。
G―8に招かれたら、それがよく分かる。世界情勢はシナリオ通りに進められ、いわなくても全ては以心伝心で決まっている。微笑の仕方と微笑の時まで示し合わせたように一致している。途上国代表が、この時とばかり息込んで悲願を訴えても、貧乏人は分際を弁えろといわんばかりだ。