ニッケイ新聞 2007年11月20日付け
新車販売促進が九九カ月の長期ローンをつけたことでブラジルGM自動車のレイ・ヤング前社長は十八日、金融市場に米国の不動産ローン「ブラジル版」を演出するものだとエスタード・デ・サンパウロ紙を通じて警告した。新車販売キャンペーンは、ブラジル全国津々浦々まで広がった。ローン金利は、中央銀行の基本金利一一・二五%より低利の年一一・二一%だ。MSantos社の調査によれば、自動車購入希望者の四三%が新車購入の意向だという。
新車の長期ローン販売は、自動車製造業者にとっても心配の種だという。新車ローンを組むために大量の資金が、ブラジル市場へ流れ込もうとしている。これは、ブラジルにサブプライム市場を形成する。そして、米国で起きた不動産ローンのパニックと同じ轍を踏むことになる。
ブラジルに引き起こされる新車ローン・パニックで、自動車産業は金融危機の渦に巻き込まれることを懸念している。これは国際金融市場に新しい流れをつくり、盛り上がったところで売りに入って巨万の富をさらってゆく手だ。
ブラジル自動車ローン協会(Anef)は、現状では米国の二の舞を演じるとは考え難いが、一考を要するとしている。消費者の所得増加と雇用創出が順調なことでAnefは、波に乗りたい気持ちが先行しているようだ。
銀行は、クレジットの供与でハードルを下げている。低額所得者の債務履行も好調で、不履行者リストへの掲載を忌避する習慣が、消費者の間に定着する傾向にある。銀行関係者が、ブラジル市場はサブプライム・パニックに程遠いと思っている。
米国の消費者は、所得を無視した身分不相応のローンを平気で組むが、ブラジルの消費者は甲羅に似せた穴しか掘らないという。ブラジルの債務不履行はこれまで、一定率に留まり無制限に増えなかった。借金を踏み倒す人間は一部だけで、ブラジルは米国のように生活習慣にはなっていないと見ている。
それにしても、新車は気持ちいい。人生が上昇気流に乗ったようで、全てのことに自信が芽生える。ものの考え方が変わる。新車は、人間を変える。それが八年払いで、月利〇・八九%で手に入る。調査によれば、月収一千三百レアル以上が、購入可能なターゲットに入るそうだ。