ニッケイ新聞 2007年11月20日付け
サンパウロ州内陸部や海岸部の社会整備が整い観光客誘致で羨望の的となっていた観光都市が、スラム街の来襲で悩まされている。観光業の繁栄に伴い、雑役の職を求める手に職のない流民も増加した。流民は市有地や環境保護地などに掘っ立て小屋をつくり、何の当てもなく生活を営んでいる。
避暑地カンポス・ド・ジョルドン市が、特別に造成した景勝地に遠慮もなく掘建て小屋が建ち並び後続部隊の来襲を防ぐため、地方裁判所は水道や電気の供給を差し止めた。
同市スラム街の住人二〇五世帯には、六十二人の幼児がいる。一ヶ所の水で全員が、バケツで運んでいる。電気も一ヶ所から百レアル払って不法接続だ。下水やトイレは垂れ流し、シャワーはない。観光都市が、聞いて呆れる。
アグアス・デ・リンドイア市郊外で人口二万人の小都市モーロ・デ・クリストは、風光明媚な景観を活かして新しい観光都市を造成中だ。欧州風の豪華ホテルを多数建設していたが一足先にスラム街が同ホテルへ張り付くように建ち並んだ。静養もできる楽園は、形なしとなった。
世界の観光客誘致に設計されたリゾート・ホテルは、一万六千人を雇用する。それに伴って下働きする四八世帯が、掘建て小屋を建て待機している。市民や商人は、スラム街を目立たない僻地へ集めるように提案した。散策道となっている市街を、彼らが歩かないよう呼びかけた。
サンパウロ市から二百キロ以内の自然が豊かに残っている地域の都市は、同じような問題で頭を抱えている。観光を売り物にすれば、直ちに話を聞きつけて流民が押し寄せる。セーラ・ネグラやアグア・デ・サンペドロ、ソコーロ、カコンデ、サンジョゼのように市が、事前にスラム対策でうまく手を打った都市もある。
地方都市の市庁は、スラム街を郊外の区へ移動させる計画だけはある。しかし、どれも候補地の合法化で頓挫している。計画は、紆余曲折して机上を出ない。市は市税の滞納や接収地を多数抱えているが、裁判所が土地の使用や供与を係争中だとして許可しない。難民の流入は、裁判所の許可など待たない。