ニッケイ新聞 2007年11月20日付け
花は路傍にちんまりと咲くのから大きな庭を飾るものまでどんなものでも奇麗だ。咲き始めの蕾もいいし、万 の桜花も素晴らしい。菊の懸崖は見事に咲き、秋の祭りには菊人形が人々の眼を奪い、香しい匂いを放ちながら夢幻へと誘う。色彩も紅、黄色、白と多彩だが、秋の桔梗の紫も捨て難い▼近ごろの日本では、ポインセチアだサルビアのと横文字ばかりが目立つようだが、熟年組にはさっぱりわからない。カタカナ語の多い日本語と同じく、いちいち花の図鑑を見ながら確かめないといけない。まあ―先に挙げた桔梗にしても、ツリガネニンジンもあるしツシマギキョウと種類が多い。そこまで調べようとすると、図鑑と首っぴきになり、これはもう額に汗しての戦いでありひと仕事になる▼日系社会でも人気が高い蘭にしても、世界には1万5千種を超えるそうだだから、よほどの好きものでないと本当の「ランの世界」は見えてこないのではないか。先輩移民にはフアンがいて余り大きくはないアパートのテラスに鉢を措き朝には水を掛けたり晩には土壌を入れ替えたりを楽しんでいた▼勿論、富豪?は邸宅にガラスの栽培室を備えていたけれども、どうも貧者のおんぼろアパートの蘭が見栄えしたと覚えている。とは―申しても遯生はカトレアと胡蝶蘭しかしらない。これだって種類は多いのだろうからまったくのお手上げなのだが、ラン協会の有志が国士舘センタ―の林にランの着生を願い木々に括りつけたそうだ。そのうちランが乱れ咲く国士舘―も夢ではない。森本ルイア会長の呼びかけ「蘭を自然に」が何ともいいではないか。 (遯)