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科学分野の経済活性化計画=民間からの投資も望まれる

ニッケイ新聞 2007年11月22日付け

 政府は二十日、来年三月から、大学院生向け奨学金の対象者を増員し、奨学金額も引上げると報じた。
 それによると、奨学金は二〇%調整され、修士課程で九四〇レアル/月が一二〇〇レアル、博士課程で一三四〇レアルが一八〇〇レアルに、また奨学金受給者も九万五〇〇〇人から一五万五〇〇〇人に増える。この受給対象者は文部省のハイレベル人材養成業務統括所、ならびに科学技術省の国家科学技術開発審議会によって認められた教育機関の大学院生となっている。
 この案は、科学分野の経済活性化計画の一部。二十一日付エスタード紙によれば、科学技術省と国家科学技術開発基金予算から一八六億レアル、その他の省庁や基金から二二六億レアルが投ぜられる予定で、さらに社会経済開発銀行などからも資金が供給される。
 また、同日付フォーリャ紙によれば、同経済活性化計画には調査研究用資材等の輸入手続きの簡素化も含まれ、今後は通関も特別扱いとなり、資材等は迅速に届くようになるという。
 この経済活性化計画は、公共の投資による科学技術の発展を目指すものだが、五日のエスタード紙によると、ブラジルの調査研究投資は、国内総生産(GDP)の一%。このうちの六〇%が公共機関による投資で、この数字は先進諸国のそれと大差はない(米国はGDPの〇・八%、スイスは1%)。
 しかし、民間からの投資となると、GDPの〇・四%のブラジルと、二・四%のスイスや二・六%の日本等、先進諸国との差は歴然となる。
 この差は、ブラジルの民間企業で働く科学者は一六%のみという数字に表れる(米国や韓国では実に八〇%近い科学者が民間企業で働いている)。これはブラジルの上級教育機関の教育レベルが民間企業の求めるレベルに至っていなかったことなどにもよるが、国内の大学院のわずか一〇%が欧米の大学院レベル(十月十一日付フォーリャ紙)という実態が改善され、教育機関と企業等の共同調査研究といった側面などがさらに前進していくことが望まれる。
 ブラジルの生産性はもっと向上されるべきとの先進諸国からの指摘も二十一日付エスタード紙にあるが、専門家の不足がブラジル産業の改革、発展の足かせとなっているという指摘も出た事がある。トゥピー油田の開発のためには石油化学分野やプラットホーム建築の専門家の必要がある等、中、長期の展望を持った教育、研究の発展、政策の確立、ならびに民間からの投資拡大が求められている。