ニッケイ新聞 2007年11月22日付け
日系農協は歴史的に三つのタイプに分けられる。一つは元コチア中央会傘下の単協・事業所の再組織化、第二に元南伯中央会傘下の農協、第三に二大日系農協中央会とは出自の異なる農協である。
元コチア系農協のうち、活動が活発な農協は、アルトパラナイーバ、ジュアゼイロ、西部バイーア、サンジョアキン、スール・デ・ミナス、パルマスなど七〇年代以降に生産団地として創設された地域の農協が多い。
これらの農協は、サンパウロ市など国内消費市場から遠隔地であったこと、地理的に周りから孤立した団地であったこと、そして農産物販売のためにはサイロ、選果・冷蔵施設などの大規模施設を協同で利用する必要があったことなどから、比較的規模の均一な農家が再出資しまとまりよく発展してきたといえる。
なおインテグラーダ農協は生産団地として出発したわけではないが、最大の事業規模を誇る日系農協である。これら元コチア系農協は二十二農協ある。
元南伯系農協は十一農協あり、パラナ州の一農協を除いて全てサンパウロ州にある。南伯系農協は、肥料、農薬、飼料など生産資材購買事業に特化した農協が多い。販売事業は農産物販売代金の回収に失敗することがあるのに比べ、購買事業は安定的でリスクの少ない運営ができると思われる。
とはいえ南伯ロンドリーナ農協、南伯サンミゲル・アルカンジョ農協、南伯ピラール・ド・スル農協など、購買事業に加え果実の販売事業を行う農協もあり、果樹部門で力を維持している。南伯グランデ・サンパウロ農協は、サンパウロ州で生産資材販売、青果物販売の拠点的役割を果たしている。
第三の二大日系農協と関連のない組織は、アマゾナス州(エフィジェニオ・デサーレス農協)、パラー州(トメアスー農協)など遠隔地の農協や、スル・マットグロッセンセ農協のように強力なリーダーシップを発揮した日系人理事が地域の非日系農業者を巻き込みながら発展した農協などである。
これらの農協は、それぞれの歴史的経緯や地理的要因により、農協の事業形態や生産物も様々である。
新たに作られた組織も全て第三のグループに入るわけだが、近年組織されたものには農協ではなく協会が多い。
協会であっても、技術指導を共有するだけでなく資材を共同購入したり、またあくまで生産物の販売は個人が行うが、協会が販売先を斡旋するなど活動内容や組織の目的は農協と類似するものも多くみられるようになった。
新たな部門である花卉関係では、技術交流や花卉関係のイベントを協同で行うために設立された協会が二組織ある。
また、輸出向け柿の技術指導・普及のために設立されたパウリスタ柿生産者協会は、有限会社を併設しヨーロッパなどへ柿を輸出するだけでなく、さらにはデコポン、銀杏など新たな生産物にも挑戦している。 このように、協会組織も農協同様日系農業者の中心的存在になっている例も数多い。なお、第三のグループの組織数は十九である。
総じて元コチア系農協は二十二農協、元南伯系農協十一農協、その他の組織が十九組織で、依然として元二大日系農協の勢力が強いことをうかがわせる。新たに組織された協会の中にも、元二大日系農協の生産者によって組織されたものもあり、人的資源がいま尚影響力を持っている。
しかし、元二大日系農協の今後の大きな課題として、中央会解散時の清算委員会から賃貸している施設を競売で買い取れるのかどうかということがある。
アルトパラナイーバ農協のように、全ての施設設備を既に購入している農協はまれで、事務所や施設が競売にかけられた場合、買い取る準備をしている農協は必ずしも多くない。今後この問題が露呈し、運営が難しくなる場合もあるだろう。(つづく、JATAK農業技術普及交流センター情報部研究員 田中規子)
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二十日付の本連載《上》に掲載した一覧表「日系農協の概要」について、執筆者の田中規子氏から訂正箇所の連絡がありました。表中、コパセントロ農協の特徴「穀類+コーヒー」を「穀類+綿」に、スル・マトグロッセンセ農協の特徴「穀類」を「穀類+綿・製糸」にそれぞれ訂正します。
JATAK=日本とのアグリビジネス提携へ―06年日系農協調査結果を踏まえて=連載(上)=コチア、南伯解散後の現状=全伯で52組織が活動続ける