ニッケイ新聞 2007年11月23日付け
米連邦準備制度理事会(FRB)が、二〇〇八年の米経済成長率を二・五%から二・七五%を一・八%から二・五%へ下方修正したことで金融市場が動揺した。サンパウロ市証券取引所(Bovespa)も二十一日、株式指数を二・八一%下げた。ドルは〇・七六%上げ、一・七七五レアルにつけたとエスタード・デ・サンパウロ紙が報じた。
市場にはリセッション回避説と懐疑説が交錯していたが、FRBが水を差した。一方、経済協力開発機構(OECD)の上半期報告書では、不動産ローンの焦げ付き額は三千億ドルと見ている。ブラジルへの余波は、米経済の定期的調節として波及するらしい。
ブラジルの通貨委員会(Copom)に相当する米国のFomcは、十二月十一日の次回委員会でさらに政策金利を引き下げるらしい。米国の来年度失業率を四・七五%から四・九%へ上方修正。インフレも急速に下がるらしい。
これはブラジルにとって、何を意味するのか。中央銀行の十一月十八日つけ議事録では、米国の政策金利引き下げ予想で米国の投機資金がブラジルに大量に流れ込む見込みという。これで貿易収支の落ち込みは、投機資金の濁流で帳消しになる。中銀は基本金利の引き下げをしないなら、別の方法で投機資金の流入を防ぐ必要がある。
経済評論家のミング氏がブッシュ政権は二〇〇一年、理想的な財政状態で前政権から引き継いだが、いまは一六三〇億ドルの穴を開けたことを指摘した。この勘定にはイラクなどの戦費が、入っていないので実際はさらに大きいと見ている。この米国の財政体質は、健全財政を採るブラジルにとって不幸だ。
米国の金融危機は、八〇年代のようなドミノ現象を起こす可能性は少ない。途上国は、ブラジルに倣って金融危機の嵐に備えて家の補強をしたからだ。それに多くは、米国から財政的に乳離れし米依存からも巣立った。余力を国内市場の育成に充てた。中国は四億人の消費者を抱え、ブラジル二つ分の大きさだ。
先進国は、ブラジルなどに生産させ原価スレスレで本国へ原料輸出をさせた。それに付加価値を加え、ブラジルよりも儲けた。この方式はブラジルでも最近、導入した。
米国はいま、ドル通貨の引き下げで輸出振興を図ろうとしているが、この方式が機能しない。米国の国内総生産(GDP)のうち七〇%を国内で消費し、輸出に回るのは僅か一二%である。米国は、花見酒経済なのだ。