ニッケイ新聞 2007年11月23日付け
第六十一回芭蕉祭(十月十二日、三重県伊賀市上野公園で開催)の(ブラジル関係の)入選者名がこのほどわかった。投句数は雑詠の部一万千八百二十八、テーマ「家」の部千八百六十四であった。
◇特選 長谷川櫂選
とんぼうの翅のはがねに変るとき 伊津野朝民
◇入選 有馬朗人選
望郷はふと湧くものよよもぎ餅 井上 人栄
ブラジルを墳墓の地とし移住祭 広田 ユキ同 稲畑汀子選
秋深し読みたき本の届きけり 新井 知里
古里や大根煮ゆる匂ひにも 広田 ユキ
同 茨木和生選
わが背丈ほどの蕨の頭摘む 香山 和栄
同 宇多喜代子選
千人が一塊となりカーニバル 織田真由美
同 金子兜太選
アマゾンへ見に来て下さい星月夜 佐藤あさ乃
群生のインコ芭蕉のすだれ咲き 東 比呂
同 倉田紘文選
掃き寄せし花屑心を豊にす 伊津野 静
行秋のベンチに老の背を並べ 杉本 絃一
大いなる祖父になりたる夫のどか 西山ひろ子
同 西村和子選
喜雨くるとアマゾン椰子のさわぎけり 今野千枝子
同 長谷川櫂選
日々増ゆる色さまざまの落葉かな 関山 玲子
ブラジルの中央高原星月夜 富樫 羽州
椰子の風南部風鈴涼やかに 菅原 岩山
穫り終へし園静もれり鰯雲 広瀬美知子
日の限り甘藷畑や夏の雲 松尾 紫郎
同 星野椿選
立子碑に寒の椿の玉零し 二見智佐子
どの顔も皺と日焼の移民祭 井上 人栄
リベイロンに俳句の日あり虚子祀る 西山ひろ子
炎天や心灼く恋ありしころ 新井 知里
同 宮田正和選
冬ざれの大地指す移民像 広田 ユキ
◇テーマの部「家」
片山由美子選
移り来て今も家伝の味噌を搗く 竹下 澄子
漬けられて大根吾が家の味となる 須賀吐句志
日曜の朝寝家中鎮もりて 渡辺 悦子