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JATAK=日本とのアグリビジネス提携へ―06年日系農協調査結果を踏まえて=連載《下》=主力産品の大豆、果樹=対日輸出の可能性を模索

ニッケイ新聞 2007年11月23日付け

■日系農協の生産能力
 報告書によると、ブラジル日系農協の組合員が所有する農地面積は、約二百万ヘクタール以上と推計され、ブラジル耕地面積の三・五%に相当する。
 この面積は二〇〇六年の日本の農地面積四百六十九万ヘクタール(内水田面積二百五十万ヘクタール、畑地二百十万ヘクタール)の約四三%にあたり、日系農協が大きな生産能力を持っていることを示している。
 次に日系農協の代表的作物の生産販売状況を、販売について回答のあった農協のデータからまとめると次のようになる。
 大豆はインテグラーダ農協五十万七千三トンを筆頭に九農協が販売を行っており、日系農協の合計大豆販売量は七十二万七千五百七十二トンに及ぶ。
 これはブラジル大豆生産量の一・三%、ブラジル輸出量の二・九%を占める。日本の大豆の輸入量は四百四万二千トン、内ブラジルからの輸入量は三十七万八千トンである。
 日系農協の大豆販売量は日本の大豆輸入量の十八%に当り、ブラジルから日本に輸出される大豆の量をはるかに上回る。
 飼料用トウモロコシについて、販売を行っている日系農協は十農協あり、その販売量合計は四十万七千八百九十六トンである。これは〇六年ブラジル輸出量の一一・二%に相当する。
 日系農家が得意とする集約的農業部門では、ブドウ、柿、リンゴなどの販売実績が大きい。ブドウ販売を行っている農協はジュアゼイロ農協の一万九千二百二十五トンをはじめ六組織(五農協と一協会)あり、販売量合計は二万六千八百三十一トンである。
 特にジュアゼイロ農協などブドウの灌漑栽培を行っている地域では、農産物販売額の七五%以上を輸出しており、ブラジルのブドウ輸出に占める割合も高い。
 〇七年版「Agrianual」(ブラジル農業統計)によると、干しブドウを含む〇五年のブラジルのブドウ輸出量は五万一千二百十三トンであるが、ジュアゼイロ農協のブドウ輸出量はこの二〇%以上を占めている。
 柿については三組織(パウリスタ柿生産者協会、スール・ミナス農協、南伯グランデ・サンパウロ農協)で、その販売量は約二千八百八十二トンである。
 リンゴを販売する日系農協は、サンジョアキン農協の約三万トンをはじめ四農協あり、販売総量は三万四千トンになる。
 その他ブラジルには、日本にはない熱帯農産物も豊富である。トメアスー農協では熱帯果樹果肉を既にアメリカ、ヨーロッパ、日本に輸出している。特にアサイは健康食品として日本でもブームになっており、更なる需要拡大が望める。
 このように大豆、飼料用トウモロコシなど土地利用型農業部門ではブラジル農業におけるシェアは大きくないが、日本の生産力や輸入量に比較すると日系農協のポテンシャルは大きい。 食糧自給率の低い日本にとって、安全安心な食糧を日系農協が供給できるのであれば、アグリビジネス提携の道も広がると考えている。青果物に関しては、現在のところ品質や検疫の問題から輸出は難しいが、ドライフルーツやジュースなど加工品にも可能性が見出せる。
■JATAKの今後の支援

 JATAK東京本部では、農拓協の全日系農協調査結果を踏まえた上で〇七年一月~二月にかけて再調査を実施し、さらにアグリビジネス提携の可能性を深く追求し今後の提携事業へ結びつけていく考えである。
 再調査では、日本の流通機構、品質基準に日系農協の生産物があうかどうかなど品質の面、農協の取り組み、組合員の取り組み、意識などの面を調査した。
 今後は農産物を、輸出商品に育てる支援を専門家派遣などの面からバックアップするとともに、日本の提携先発掘も支援する。
 日本の提携先探しについては、ブラジル日系農協の紹介ビデオ作成を農拓協に委託し、提携推進に活用する予定である。
 また、JATAK農業技術普及交流センターでは、調査結果をデータベース化しインターネットで公開できるシステムを構築中である。
 日系農協の活動状況をインターネットを通じて日本でも検索できるようにし、必要な情報を提供する。
 JATAKでは、農協調査の結果が、日伯間農協アグリビジネス提携に結びつくことを支援するだけでなく、日系農協間の情報交流や技術交流、農協間提携に役立っていくことを期待している。(おわり、JATAK農業技術普及交流センター情報部研究員 田中規子)



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