ニッケイ新聞 2007年11月24日付け
茶の幽玄の世界や四季の味を巧みなまでに造りあげた湯木貞一は、現代の料理名人であり、文化功労賞をも受賞している。高級料亭「吉兆」の創業者であり、今も一流の味覚を誇りフアンも多い。そんな名誉ある「船場吉兆」が、悪の限りを尽くしているのは、真に情けない。福岡で売った菓子が賞味期限を過ぎたのにラベルを張り替え、鹿児島かの牛肉を「但馬牛」と偽をつく▼しかも、「地鶏」として客に出していたのが、なんとブロイラ―とわかり、大阪の警察もびっくり仰天したそうだ。それが、従業員が勝手に動いたのならまだしも、湯木正徳社長の長男である湯木喜久郎取締役が陣頭指揮をとったそうだからもう話にもならない。泉下の貞一氏も怒り心頭に発しているだろうけれども、これは「お詫び」で済む問題ではない。浪速は商人の都なのに「偽りの商売」では、船場の旦那さんからも見放される▼いや、これは「吉兆」だけではない。これも、大阪の栗本鐵工所が、高速や国道の橋梁に使った型枠強度を改竄したのが判明し、これもまた驚天動地。それが2や3箇所ではなく9000箇所に及ぶそうだ。鉄の厚さを薄くしてのインチキらしいが、これだって許し難い。国交省は「安全性に問題はない」と話しているけれども、本当に大丈夫なのかな―である。道を車で走り、歩くのは市民なのだ▼まだ―ある。防衛省の迷(名)次官であった守屋武昌氏にまつわる疑惑も際限がない。山田洋行は、100円の品物を150円に水増しの請求が明らかになり防衛省から取引停止の処分だし、ゴルフ三昧の守屋氏の癒着も、もっと弾劾した方がいい。(遯)