ニッケイ新聞 2007年11月28日付け
米国発金融危機は二十六日、波状攻撃となってサンパウロ市証券市場をまたもや襲い、株価指数を三・一二%下げ、月間累計での下げ幅が九・六%となった。ドル通貨は、一・八二四レアルに。リスクは八%上げ、二五一ポイント。金融市場に冷水を浴びせたのは、米国最大の銀行シティグループによる行員四万五千人の解雇発表だと二十七日付けエスタード紙が報じた。マンテガ財務相は、国際経済情勢に対処する為替対策としてソベラノ・ファウンド(国家基金)の設立を提唱した。
米連邦準備制度理事会(FRB)が流通量の増加を示唆したことでドル通貨は十一月、レアル通貨に対し五%上げた。ブラジルの投資家にとって十一月は、過去二年で最低の月であった。米国発の金融危機は、波状的に世界の金融市場を襲っている。サンパウロ市証券市場にも、ボディ・ブローのようにフックが効いた。
証券アナリストは二十六日の金融取引を見て、ブラジルの楽観的予測に反し、グローバル不況の波を乗り切れるか疑問に思い始めたようだ。米国発金融危機が底なし沼の様相を呈し始めたことで、ブラジルがそれに耐える経済的余裕があるのか懸念している。
ブラジルモルガン・スタンレイは、焦げ付きが不動産ローンにとどまらずグローバル・クレジットにも及んでいるという。問題は、サブプライム(三流証券)だけではないというのだ。史上最大のバブルが、崩壊前夜にあるといえそうだ。米国の「最後の晩餐」は終わり、これからブラジルもツケを払わされる。
為替市場はこれから、大きく動揺するものと思われる。財務相が提唱した国家基金(ソベラノ・ファウンド)とは、大量の外貨出入で翻弄されるブラジルの為替市場を管理する基金といえる。但し、説明不十分なため国民はよく理解できない。発案者は、中銀のメイレーレス総裁らしい。
ブラジルが、国外で投資している外貨を資金に使うつもりらしい。国内で必要以上に氾濫し為替相場を振り回す外貨を相殺し、分不相応に値上がりするレアル通貨を安定させる狙いだ。チリやロシア、中国では当たり前のように行っているが、ブラジルは今ようやく目が覚めたところだ。
国家基金の資金は外貨準備高を切り崩すのか、国庫から出させて産業開発銀行(BNDES)経由で充当するのか財務相自身も暗中模索らしい。外貨準備高はインフラ整備に使うはずだったが、国家基金というリスクの伴う用途に使うとなれば連邦令が許すまいと関係者は見ている。