ニッケイ新聞 2007年11月29日付け
国連は二十七日、二〇〇七年度人間開発指数(HDI)を発表した。同システムを取り入れて三十年目でようやく、ブラジルは先進国入りをした。指数は〇・八〇〇ポイント、先進国の中で最下位の七十番目。HDIは、各国の所得水準と教育普及率、医療行政で算出される。ブラジルが評価されたのは、生活扶助制度にセットした奨学制度のためとされる。しかし、他の国と比較すると、ランクを下げているので誉めたものではない。
所得はやや向上したものの教育や医療は今一であり、改善の速度はのろい。調査は二〇〇五年をベースに、二〇〇七年度ブラジルのつつましいHDIである。辛うじて先進国入りをしたが、課題は山積。
ブラジルを先進国入りさせたのは、所得の再分配に役立った生活扶助金といえそうだ。医療や教育、衛生行政は、旧態依然である。ブラジルの社会文化指数は、チリやアルゼンチン、ウルグアイ、メキシコの後塵を拝している。
ブラジルが、長年付き合ってきた中進国の殆どはアフリカ諸国。ブラジルは経済発展では見るものがあったが、社会整備では多くの国に追い抜かれた。お金も必要だが、生活環境は後回しになった。ブラジルの国民一人当りGDP(国内総生産)は、八・一九五ドルから八・四〇二ドルへ向上した。
貧困指数では、途上国百八カ国の中二十三番目に顔を出している。これは、ブラジルにまだ膨大な数の文盲がおり、上下水道のない家で生活し、乳児と産婦の死亡が許容範囲を超えていることを意味する。
暗いことばかりではない。社会整備への投資が順調なため次年度の統計は、HDIの向上が期待できる。経済成長への負担とならずに所得の再分配を達成したことは、政策が正解であったといえる。経済を発展させながらの所得再分配は難事とされるが、ブラジルでは成功した。
ブラジルは、大器晩成型らしい。お隣のアルゼンチンやウルグアイ、チリ、メキシコは、行政手法がブラジルより上手だから爪の垢をもらうとよい。社会格差や所得格差の是正は、隣国のほうが能率的だ。
所得再分配のため生活扶助金を配布したブラジル方式は、国連でこれから前例として採用するらしい。さらに農地や税制でも格差是正の再分配方式が導入されることを、国連が期待している。