ニッケイ新聞 2007年12月5日付け
PT(労働者党)は七人の党首候補が、二〇一〇年の大統領選で党公認候補を狙っているのをよそにルーラ大統領は、事ある毎に次期大統領選を視野に入れてロウセフ官房長官の肩入れをすることにした。
ブラジルはサントス大陸棚の大油田の発見とともに、もう一つの大金鉱を探し当てたと、デジタル・テレビの開局式で大統領は官房長官を紹介した。官房長官をデジタル・テレビ開局の功労者としてではなく、大油田に並ぶブラジルの二大資産だというのだ。
ルーラ大統領は、官房長官を試している。大統領のお膳立てをいかに次期大統領選へ結びつけるか、官房長官の政治力と才能を観察することにしたと四日付けエスタード紙が報じた。
先ず連立党の幹部を、いかに取り込むか。次に表舞台に官房長官が再々現れることで、社会や国民の懐へ入り支持を取り付けることができるか。人の心を一言で捉えるキャッチ・フレーズが、瞬間に考え出せるか。これで波に乗り沖へグングン出れば、そのまま大統領選へたどり着く。
ダメなら下し、他を探す。経済活性化政策(PAC)は彼女の手中にあり、生かすも殺すも彼女の一存だ。これが、ルーラ流人間つくりである。官房長官は早くから油田発見を知りながら、公表の政治的タイミングを測った。エネルギーについて造旨が深いのも、官房長官の強味だ。
官房長官は、ペトロブラスが発見した大油田がありそうな地域の試掘入札を中止させた。これは、官房長官の国家レベルの政治力を見せた一幕である。デジタル・テレビの方式決定では、水面下の熾烈な激戦が展開された。現行方式に決めるには、同長官の政治力がものをいった。
ルーラ大統領は、海千山千の労組幹部を御してきた。それに呼吸がピッタリ合うのも、官房長官だ。ライバルが均衡を崩すなら、小指で一寸押して突き落とすのも心得ている。ロウセフ長官は、PT内の権力闘争を生き抜いてきた人物といえそうだ。