保健、衛生や教育は後回し=食い違う言葉と現状
ニッケイ新聞 2007年12月11日付け
ブラジルが国連の人間開発指数(HDI)で〇・八〇〇をとり、先進国の仲間入りしたというニュースは十一月二十九日付け本紙でも報じたが、その喜びもつかの間。本紙記事でも触れていたHDI算出のための三大指標のうち、教育、医療行政の二つの指標がまだまだ省みられていないことが政府の人件費に見る給与調整から明らかにされた。
九日のエスタード紙によると、経済の専門家は、現政府は税収を上げるための助けとなるような分野(会計院の経営陣や会計コントロールのためのアナリストなど)に対しての人件費の上げ幅は大きく、医療や教育といった分野の人件費のそれは小さいと言う。今年の場合、一月から十一月の給与は昨年同期比で、前者が二一・一八%、保健、衛生関係は一・三%、教育部門は五・三%の伸びだという。
小児科医として働き、週二〇時間、大学の教授として四〇時間働くと言う女性の給与は、会計院の職員の半分でしかないというのが実態。小児科医は、「自分たちは、医師として患者を診察し、かつ生徒たちを教えると言う大きな責任を負っていると言う自負を持っているが、政府の払う給与は、自分たちの負っている責任の大きさ、重さに見合ったものだとは思えない」とし、ルーラ政権に対しても、「給与の問題もさることながら、教育は最優先課題だという言葉と実際がかみ合わないことに失望している」という。
教育については、六日付け本紙で国連経済開発協力機構が行った一五歳の学生の学習到達度調査(Pisa)の結果の報告をしたように、ブラジルの教育水準は文盲率こそ下がったといえるが、英才教育の域からは程遠く、医師や医療研究機関等でも給与に対する不満故のストがあったりする。十一月三十日のエスタード紙には、政府管轄の研究施設ストのため、ガンの進行状態をチェックするための検査に使う放射性フッ素の生産が止まり、患者も病院も打つ手がないとあったりしたが、人件費の調整にこれほど大きな差があっては、現場の士気も落ちると言うもの。これが医療関係予算の減額その他のニュースとも関係ありと考えれば、今後も、この傾向は続くと考えられる。
国民を、生かし、育て、用いてこその国。最もそのことを自覚していて欲しい政治の世界で、教育、医療がなおざりにされている状態に警鐘が鳴らされた。