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マデイラ川発電所入札終る=来年着工、12年発電開始

ニッケイ新聞 2007年12月12日付け

 エネルギー危機の救世主と謳われたマデイラ川のサントアントニオ発電所の入札が十日に行われ、マデイラ・エネルジア・コンソーシアムが設定された上限価格を三五・三%下回る七八・八七レアル/MWhで落札。この結果には、上限価格を設定した担当者も驚いた(七日のエスタード紙では、入札価格は上限価格を大きく下回ることはないと予想されていた)が、他の二つのコンソーシアムの九四レアル、九八・〇五レアルを大きく引き離し、わずか七分の入札となった。
 政府関係者は、今回の結果は、電力事業、特にアマゾン地域における発電事業が、これまで以上に安価なものとなる可能性を示すものだという。事実、この価格は老朽化してきている他の水力発電所の上限額を下回るもので、入札したコンソーシアムは旧価格以下でのエネルギー供給を約束したことになる。
 十一日のフォーリャ紙によれば、サントアントニオ発電所は、二〇一二年に最初のタービン二基が稼動し始め、二〇一六年までに全四四基のタービンが稼動の予定。すべて稼動の暁には、三一五〇MWの発電量(イタイプー発電所の3倍)になる。落札価格は一〇〇億レアルだが、経済動向や環境から見た建築経費は一三五億レアルという。
 九日のフォーリャ紙によれば、今回入札の発電所は、二〇一〇年までに入札予定の発電所建設の皮切りで、アマゾン流域では他に九件の発電所建設計画がある。中でも大型なのはシングー川のベロ・モンテ(一万一〇〇〇MW)、タパジョー川のサンルイス(九〇〇〇MW)だが、今回の入札が安価であったことで、電気代が安くなると喜んでばかりもいられない。
 一つは、今回の入札価格は発電量の七割分(電力配送会社を通して売られる電力)に適用され、残り三割は大手企業を対象にした自由市場に売られること。この三割分は入札価格とは別に価格設定され、電力消費の約四六%を占める工業電力の引上げが考えられる。
 また、環境問題や湖底に沈む地域の住民への補償問題もある。サントアントニオ発電所建設では二一七平方キロ、同じマデイラ川に建設予定のジラウ発電所では二五八平方キロのダム湖ができる予定だが、生態系変化他、環境への影響は否めない。今回の入札でも、環境団体団体等の激しい抗議行動が行われた。また、十日のエスタード紙には、水力発電は環境問題がネックとなる可能性が強いとして、風力発電等を積極的に考えるべきとの声もあることが報じられている。
 計画から工事、稼動までに多くの時間を要し、環境への影響も大きい水力発電。エネルギー問題の即時解決にはつながらない弱さもあるが、先取り投資でにぎわい始めたポルト・ベーリョの町の経済発展も含め、大きな目で舵取りできる機関、人材、政策が必要といえよう。