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都市整備にスラム抗議=予告なき強制執行で住民逆上=産婦や幼児にもゴム弾の雨

ニッケイ新聞 2007年12月13日付け

 マルジナル・ピニェイロスのスラム街レアル・パークの都市整備で十一日、百五十四キロメートルに及ぶ過去最大の交通渋滞がおこり、サンパウロ市が停止するパニックが起きた。当局はスラム街に予告もせずに強制立ち退きを執行しバラック百四十棟を取り壊したので、住民は怒ってマルジナル幹線道路を遮断した。
 住民は十一日午前六時、裁判所執行官とブタンタン区役所のピンテリッヒ区長による一時間半以内の立ち退き通達を受けた。突然の強制立ち退きに住民が抗議すると、市は直ちに軍警部隊を呼び出し暴力的な強硬手段を採った。
 住民にとっては、掘っ立て小屋とはいえ、借金をして建てた住居だ。市側の強制執行は、抗議する住民にいきなり問答無用の催涙弾を見舞った。小屋の中には身重な妊婦や幼児が多数おり、軍警によるゴム弾の攻撃を全身に浴びていた。
 スラム街は、動力公団の所有地である。小屋は最近三カ月に急増し、四十戸の小屋に百八十人が住んでいた。空家の百棟は、賃貸用に建てられたようだ。市の強制執行に逆上した住民が十時半、高速道路に老人や子供を連れ出し、座り込み戦術を始めた。それを軍警が催涙弾で追い払った。
 デモ鎮圧を指揮した軍警部隊のモラット大佐は「上司の命令とはいえ、管轄当局に人間らしい心が欲しい。スラム街に住む人にも、それなりの理由と問題がある」と述懐した。また公共弁護局は、スラム街の住民にも時効取得の権利があり、市の一方的強制執行は違法行為だという。
 公共弁護局は、市がスラム街の住民に配布する立ち退き保証金五千レアルが、問題解決にならないと見ている。保証金を貰った住民は、新たなスラム街を造るだけで悪循環だという。住民は、職場に近い空き地で新たに小屋を建てる。
 住宅公団はスラム街住民のために、月払い百レアルの分譲住宅を建設する。しかし、この百レアルが彼らには高嶺の花らしい。住宅公団の発想は、スラム街のニーズに応えていない。スラム街は住宅問題ではなく、社会の構造らしい。