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専門職確保は時間との戦い=不足が続けば成長の妨げに

ニッケイ新聞 2007年12月13日付け

 十一日付けヴァロール・エコノミコ紙が「工業界は国外にまで人材を求める」との見出しで、ヴァーレ・ド・リオ・ドッセ(Vale)が多国籍企業の強みを生かして東欧諸国などで人材マップを作り、ブラジル市場の必要のために、来年度、少なくとも五〇〇人の技術者と六〇人の地質学者を含む七〇〇〇人の専門職を国外から雇用すると報じた。
 この計画は、多くの企業が持つ、専門職の不足が産業界の成長に水を差すという不安がより現実的なものになったことを感じさせる。この不安は十一月九日フォーリャ紙などにも言及されているが、ペトロブラス(PB)が生産目標を達成できずにいるのも、資材や人材の調達が困難なためにであったという。
 今回のValeの大型雇用計画は、これまで働いてきた技術者や地質学者が年齢的に交替すべき時期になってきたことや、鉄鋼業が環境を破壊するといった考えが彼らの必要とする分野を希望する人材の目を他に向けさせたことで、国内での人材が確保できなかったため。また、鉄鋼業は二〇〇〇年から二〇〇六年にかけて二〇〇%の成長を遂げており、業界の急速な成長も技術者たちの不足を招いていた原因だという。
 この傾向は、PBも含めた化学、石油化学や、運送資材、工作機械、鉱物採掘などの分野で二万人超の専門職の不足を訴えていることからも伺われ、ヴァロール紙によれば、一五の分野で一九万人余りの専門家が不足しているという。このまま専門職が不足した状態が続けば、近年中に経済の発展のスピードは鈍る可能性があるが、専門職の不足解消は時間との戦いであるとの言葉さえ使っている。
 Valeも含めた多くの企業は、即戦力を求めて国外からの雇用に頼る一方、国内での人材養成を第一とする考えで一致しているが、人が育つには時間がかかる。企業が独自に、または、資金援助して育てる、専門家養成機関に任せるなどの方法の他、国民の学歴の底上げといった課題もあり、高校レベルの教育にもっと投資する必要ありとの声や、高等専門学校、大学の技術者養成コースなどに寄せる期待も大きい。
 政府は二〇一〇年までに国立技術教育センターを現在の二〇〇から三五四に増やし、来年度の専門職教育の予算を今年度の三倍とする計画。また、十一月二七日のフォーリャ紙にもサンパウロ州の高等専門学校、技術大学増設計画が報じられたりしているが、粗製乱造の評のある法学部や医学部の轍を踏むことは許されない。