ニッケイ新聞 2007年12月14日付け
ブラジル地理統計院(IBGE)は十二日、二〇〇七年度の経済成長率(GDP)が五%を上回る見込みと発表したことを十三日付けエスタード紙が報じた。今年第3四半期のGDPが、昨年同期比で五・七%増とり、これまでの予想率四%を上回る公算が大きくなった。部門別で最も成長が著しかったのは、農畜産の九・二%増。期待の工業は、五%増で辛うじて面目を保った。投資の伸びは、構造的に国内市場向けを中心とし見るものがあった。
ブラジル経済は、23四半期連続で成長したことになる。経済動向を見ると、市場を支えたのは家庭消費と投資の伸びである。国内消費は第3四半期に昨年同期比六%増と、過去十年で最高。これは経済成長が、所得とクレジットの増加に支えられて順調であることを示している。
投資は、昨年同期比一四・四%増。マンテガ財務相は、投資の伸びが経済成長を保証していると述べた。消費の増加六%に投資の伸び一四%は、健全で理想的な経済成長といえる。投資も生産もないのに消費だけ伸びた米経済は、病的というしかない。
経済評論では辛口のミング氏が、今回のGDP発表は文句のつけようがないと評した。第3四半期でブラジル経済は、足が地に着いた感じという。消費が市場を支えたというが、過熱した様子はない。この結果を最も反映するのは、経済政策と思われる。多くの自称学者が経済政策を批判したが今、口をつぐんだ。
インフレは目標内に抑制されているから、エンジンが潤滑油まで燃やして走っているのではない。これからルーラ政権は、政策の議会承認が容易になりそうだ。工業設備の老朽化や産業空洞化を訴える者も、少なくなる。財政黒字の縮小や高金利、不当為替率を克服しながら、ブラジル経済は前進するらしい。
エコノミスト誌は他の途上国の驚異的な経済成長を挙げるが、それはサーカスの軽業のようなもの。ブラジルの場合は違う。足が地に着いているか、着いていないかの違いだ。足を踏み外しても、ブラジルがこけることはない。それは、やがて分かる。
これからはインフラ整備を忘れず、エネルギー危機に気をつけること。残る問題は、ポンコツ車のような政治。肝心の社会保障法や税法、労働法などの政治改革は、いつも先送りで一向に進まない。