ニッケイ新聞 2007年12月19日付け
十一月二十七日から始まった一神父の抗議行動が、バチカンやブラジル民を動かしている。
事の発端は、サンフランシスコ河の大型疎水工事。同河の豊富な水を北東伯の乾燥地にひき、灌漑用水等に使うという計画だが、七二〇キロに及ぶ疎水計画には今も賛否両論がある。実は二〇〇五年にも同じルイス・カピオ神父が抗議の断食(ハンガースト)を行ったのだが、その時は、政府がもう一度話し合うことを約束し、断食は一一日間で中止された。しかし、今回は、政府が約束を果たさないままで工事に乗り出し、カピオ神父が再び断食を開始、今日で二三日に及ぶ。
十五日付けフォーリャ紙によれば、サンフランシスコ河流域委員会長でミナス連邦大学教授のマシャード氏は、「政府はわれわれとも環境問題の専門家とも話し合おうとせず、われわれの言葉に耳を傾けようともしない」という。疎水計画はセアラ州のエリートによる自州の経済発展のための計画であり、この計画によっては北東伯の水不足は解消しない、また、国際的な金融機関からの貸付がないのも、計画に根本的な問題があることを見抜いているためだともいう。
これに対し、セアラ連邦大学のカンポス氏は、この計画はサンフランシスコ河流域以外の地域に水を流し、必要な地域に分配するためという。しかし、氏自身も、疎水計画は大、中都市は潤すが、小都市や農業地域は水が届かず、水不足の完全策ではないという。
この計画に反対するカピオ神父の断食については、伯字紙も動きがあるたびに報じているが、十五日には政府がバチカンに仲介を要請した。それに応じ法王親書も届けられたが、神父は十六日、「親書は私の身を案じてくれたもので、断食の中止を命じてはいない」として断食継続を表明。
政府としては、十七日に大統領が側近に対して神父との交渉を行うことを承認したが、貯水池建設などの条件は提示しても、政府としての疎水工事中止の意思はないと明言。なお、ブラジリア地裁が十日に工事中止命令を出し、軍も作業を中断しているが、政府側の総弁護庁は最高裁に働きかけて工事中止命令の取り消しを求めている。
神父の体調は、衰弱が見られ、連日執り行っていたミサも、十七日には断食開始後初めて、参加するだけとなった。一方、神父に賛同する人たちの行動は、十七日には各地で断食と祈りによる支援が行われる等、広がりを見せている。全国司教会議も神父を孤立させることはないと言明した。