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経常収支、5年で最悪=来年は赤字を覚悟の中銀

ニッケイ新聞 2007年12月21日付け

 ドル安による輸入超過の傾向が続くブラジルだが、十一月の国際市場の当座勘定(経常収支)は、輸入超過と企業の利益配当金の国外送金増加とで一三億四四〇〇万ドルの赤字となった。これは二〇〇二年五月以来最悪の数字で、中央銀行(BC)は、過去一二ヶ月間の累積での経常収支について、今年度は黒字で終っても、来年度は三五億ドルの赤字となるとの見通しを発表した。ルーラ政権では初の赤字となる。
 経常収支の減少は今年七月から始まっていたが、ドル安による機械設備も含んだ輸入の増加は月毎に増加し続けている。今年に入ってからの貿易収支は、三六四億ドルの黒字となっているが、輸入の伸びは輸出の伸びを上回っており、貿易黒字は昨年同期と比べ、五〇億ドル減少となった。これに対し、国外からの直接投資を行った企業による利益配当金の国外送金は、今年累積で一八一億二〇〇〇万ドルに及んだ。
 今年の動きで目をひくのは、国外からの投資の増加で、これはブラジル経済の過熱と安定を見込んだ結果といえる。しかし、この国外からの投資は利益配当金の国外送金額増加にもつながり、十一月のサービス・所得収支の二一億三一〇〇万ドル赤字という数字を生んだといえる。
 専門家は、貿易収支の中での輸入の増大と国外からの投資増大に伴う利益配当金送金の増大が全体として経常収支を小さくしてきた主な原因と見ているが、二十日付けフォーリャ氏では、経済家のアントニオ氏が来年度の赤字予想を「五年間にわたる国外からの不安材料を減らす努力を水の泡とする」ものだとする意見を記載。
 それに対し、他の専門家は外貨準備高が増え、国外への負債減少といった利点もあったことなどを上げ、この程度の赤字は心配しなくても良いとする。
 二十日付けエスタード紙には、来年度の経常収支赤字は八〇億という予想をたてている専門家もいると書かれている。同専門家によれば、国外からの資本流入がある場合には経常収支赤字は起こりうることで、この国外資本流入が現在のブラジルの少ないインフレで高い成長を助けているという。同氏によれば赤字は国内投資で吸収しうるという。
 なお、機械設備の輸入等による投資は国内の経済発展を支えてきたという見方は共通しており、今後その投資の結果が現れるとしている。