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忘れてはならないセラード=高ピッチで進む生態系変化

ニッケイ新聞 2007年12月27日付け

 環境問題というと、アマゾンが注目されがちだが、二十五日付けフォーリャ紙に、セラードの温暖化ガス排出が過小評価されているとの記事が掲載された。
 この記事によると、セラードの生態系破壊により排出される二酸化炭素ガス(CO2)は、アマゾンの森林破壊によるガスの三五%に相当するという。アマゾンの森林破壊によるガス排出量はブラジル全体の七五%とされているが、アマゾンでの木材伐採や放牧地への変換、サトウキビや大豆の栽培地造成、ならびに火事を考えるならば、セラードの用地使用形態はアマゾン以上のスピードで変化しているという。
 セラードは国土面積の二四%。日本との協力での開発も行われてきたが、ブラジリア大学(UnB)の研究によれば、セラードの生態系の四〇%は既に変化しているという。コンサベーション・インターナショナル(CI)の環境保全戦略のホームページには、この地域の生物多様性を脅かす要因として、家畜の過放牧と換金作物栽培のための焼畑、木炭生産を上げているが、UnB研究班は過去二〇年でのヘクタール当たりCO2排出量はセラードが二二〇トン、アマゾンが六二〇トンで、用地使用形態変化によるガス排出量で見るならば、セラードは少なくとも二五%のガス排出量アップにつながるという。
 また、セラードの場合、家畜放牧によるメタンガス排出も注目され、五〇〇〇万ヘクタールに及ぶ放牧地からのメタンガス排出量は、全国排出量の三〇%。炭酸ガスで言えば、乗用車三六〇〇万台が排出するCO2に相当するという。
 しかし、研究班が懸念するのは、毎年排出される温暖化ガスのことだけではない。生態系変化により生じる水の循環系変化なども懸念材料の一つで、自然の生態系がセラード地域の代表的作物である大豆畑に作り変えられると、水の循環系の範囲が狭まり、土地はより乾燥するという。
 生態系変化による主な影響は、地域の降雨量の一〇%減少、地表温度の平均〇・五度の上昇、雨季半ばでの晩夏の現れが頻繁になるなどだが、その他、植物系や動物系の生態に影響を及ぼす窒素など、炭酸ガス以外の化学物質の循環にも大きな影響が及ぶという。
 このため、UnB研究班は「セラードの多様な生態系と自然条件の維持は選択肢の一つではなく、必須条件の一つだ」という。その意味では、アマゾンの森林破壊の跡地に元の植物系ではないデンデやし植林を認める政策もセラードと同じ過ちの繰返しといえよう。
 なお、ICでは、ブラジルのセラードは、「同地域が育んできた植物相は世界中の熱帯サバンナ地帯の中でも最も多様性に富み、また、固有種の割合が非常に高いと考えられて」おり、「他に例を見ないほど豊かな多様性を有して」いると紹介している。