ニッケイ新聞 2007年12月28日付け
イタリア政府が一九七五年のコンドル作戦で行方不明となったイタリア人の消息を追って関与者百四十人に逮捕令状を発行した。この中に十三人のブラジル人が含まれることでジェンロ法相は二十六日、イタリア政府から正式に要請があれば捜査を行う意向であることを表明したと二十七日付けフォーリャ紙が報じた。コンドル作戦とは軍政時代、南米七カ国の軍事政権が反政府分子の一掃で共同作戦を執り、数千人に及ぶ消息不明者を出した事件。
法相は、伯伊両国間にブラジル人犯罪人の引渡し協定がないし、それをイタリア政府も知っているはずという。しかし、捜査を行い事実解明はする。告発されたのは、国家情報部(SNI)幹部と軍警上層部であった。たとえ有罪であっても時効または特赦法が適用され、処罰は困難と法相は見ている。
南リオ・グランデ州人権団体のクリシェッケ代表は、多数のイタリア系アルゼンチン人がブラジル国内で拘束され、隣国へ連行されたので関係者はイタリア政府機関の事情聴取に応じるべきだと述べた。
司法判例として最高裁が検察庁へ捜査を要請し、ブラジル国内で裁判にかけるしかない。ブラジルの特赦法は、国際犯罪に適用されないという人権団体の見方だ。国際法には、特赦という語句がない。告訴された全員は、殺害と拷問、失踪の犯罪で裁かれる。人権団体が当時の記録を集めているが、ことはそんなに簡単ではないようだ。
イタリア政府がコンドル作戦の解明に乗り出したのは、南米七カ国の軍事政権が証拠隠滅を図り、事件を闇に葬ろうとしたからだ。このような忌まわしい事件が二度と起きないため責任者を処罰すべきだと、イタリア政府が考えている。
告発されたブラジル人十三人は、イタリア人二人を国の内外を問わず逮捕する命令を受けた。その他多数のアルゼンチン人が、ブラジルとの国境や空港で逮捕され消息を絶った。
米国の機密文書によれば、ブラジル軍はコンドル作戦で主役を演じたほうだと、米歴史学者のコーンブルー氏がいう。しかし、立件に必要な部分はブラジル政府の手にあり、公開は困難と見ている。
一方、イタリア政府から告発されたブラジルの関係者は事件当時、現役から引退しており事件の関与はあり得ないと否定した。またフィゲイレード元大統領のように鬼籍の人も多い。