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全伯で百周年記念事業が進行中=おもな計画を一気に紹介=各地に日本庭園や記念誌など

ニッケイ新聞 2008年1月1日付け

 移り来て一世紀――。海を渡った日本移民とその子孫たちは、百年にわたり、ここブラジルの社会に様々なものを残してきた。古くは五十周年を機に実現したサンパウロの文協ビル(文化センター)のような建築物、日本庭園や鳥居、記念碑や資料館、さらに今ある各地の文協会館も、先人たちの遺産と言える。そして今、百周年を前に、国内各地で記念の建設事業が進められている。その形はそれぞれ違っても、日系社会百年の足跡を後世に伝えようとする思いは共通のものだ。いまや世界最大の人口を誇るブラジル日系社会。慶賀の年が過ぎた後、未来の子供たちには何が残るだろうか。全国で現在進行中の主な記念事業を紹介する。

【パラナ】

 国内第二の日系人口を数えるパラナ州。州内七十数団体を束ねるパラナ日伯文化連合会(リーガ・アリアンサ)を中心に六月の記念式典に向けた準備を進めているが、記念事業の方は各地とも特色ある計画を打ち出している。
 式典会場となるローランジア移民センターでは、「夢テーマパーク」の建設プロジェクトが進行中。
 移民の歴史や日本の文化、技術などを紹介する三つの常設パビリオンを核に、劇場、各種施設を備えた壮大な計画だ。建築総面積は五万四千平方メートル。昨年十二月には観光省から一千万レアル(約六億円)の予算が支出されることが確認された。連邦政府側が、観光資源としての価値を認めた証といえる。
 州都クリチーバ市では、五十二万平方メートルの敷地を使った「百周年記念公園」の計画が進む。
 総工費は約一千万レアル。園内の池に日伯両国をかたどった島を造成し、記念センターを建設。その入り口部分に展示するため、現在はロシア領海に沈む第一回移民船「笠戸丸」の錨、鐘、操舵輪を引き上げる構想も進んでいる。
 州内第二の都市ロンドリーナ市では、〇六年十月に死去した最後の笠戸丸移民、中川トミさんの名を冠した「Praca da Imigracao Japonesa-TOMI NAKAGAWA」を市中心部に建設する。
 約一万平方メートルの土地を日本風に整備。舞台などもある市民の交流スペースになる。広場には、造形作家の豊田豊氏による高さ二十二メートルの記念モニュメントが設置され、三〇―四〇年代に同地へ入植した先駆移民の名を刻んだ顕彰プラッカが貼り付けられる予定だ。
 同じく北パラナのマリンガ市でも、記念の「日本公園(Parque do japao)」の造成が進む。こちらは広さ十万平方メートル。総予算は二千二百万レアル(約十二億四千万円)で、園内には日本庭園のほか、文化センター、総合体育館の建設なども計画。日本とブラジルの地図の入った鋼球を掲げた記念塔も建設される。
 来年六月、式典の日に開園を予定。完成に向け、姉妹都市の兵庫県加古川市からも造園師を招く熱の入れようだ。
 このほか、ブラ拓四移住地のひとつ、アサイでも、旧ブラ拓所有地に三階建ての「城」を建てる計画を打ち上げた。また、港町パラナグアでは昨年七月に日本庭園が完成。現在、姉妹都市の名を冠した「淡路記念館」の建設を進めている。
 同州ではさらに、州内の六十数都市で記念碑建設が計画されているという。

【リオ】

 笠戸丸以前からの歴史を誇る旧都リオでは、「リオ州日本移民百年史」を編纂中。大きな建設プロジェクトはないが、六月の式典前後に日本展・農産展や、静岡県浜松市の大凧あげなど大きな行事が企画されている。リオ日系ではまた、市中心部に百二十五本の黄イッペーを植樹し、麻生太郎前外相(日伯議連会長)揮毫の記念碑を設置。あわせて近郊バレンサ市に百本の桜を植える計画だ。

【ブラジリア】

 かたや現在の首都、六月十八日にブラジル政府公式式典が開かれるブラジリアでは、中西部日伯協会連合会を中心としたブラジリア日本移民百周年記念委員会が事業計画を進める。
 今年入植五十周年を迎えるブラジリア日系社会では、現在、首都の歴史と重なりあった同地日系人の歴史をまとめた「移民百周年DF入植五十周年記念誌」を編纂中。
 さらに現在学生寮がある土地に、日本文化スペースを建設する計画。完成後は同連合会の会館として利用する予定だ。

【ミナス】

 ウジミナスやセニブラ、さらには初期のセラード開発事業など、戦後の日ブラジル家プロジェクトの中心となったミナス・ジェライス。ここでも、州都ベロ・オリゾンテ市で日本庭園の建設計画が進む。
 市営動植物園の入り口、約五千平方メートルの土地に作られる同庭園は、園内に茶室や三メートルの滝なども備える。六月の開園式をめざして現在、急ピッチで工事が進められている。
 さらには、同州百周年イベントの中心となるミナス日伯文化協会の会館建設も進行中。今月中には落成式が行われる見込みだ。
 ミナスではこのほか、移民史の発刊なども計画。また、市内パンプーリャ湖の埋立地に日本移民百周年記念館を建設する計画もあるが、こちらはルアネー法の認可待ちの状態。

【ヴィトリア】

 隣のエスピリト・サント州都ヴィトリア市でも、日本庭園の建設計画が立ち上がっている。広さ約三千平方メートル。鳥居や記念碑、灯篭などに加え、日本とブラジルをかたどった芝生を整備する計画だ。
 こちらは地元ヴィトリア日系協会の隣接地に建設する計画。移民の日までの完成を目指しているが、費用などの問題もあり、実現に向けて進行中だ。

【南マット・グロッソ】

 ノロエステ鉄道の終点として、敷設工事に携わった笠戸丸移民から入植がはじまった州都カンポ・グランデ。同地でも地元日系団体を中心に記念事業が計画されている。
 一つはノロエステ線の鉄道跡にあたる市有地に、記念の広場を整備し、モニュメントを設置する計画。そのほかに州の協力を得て、市内の日本人会所有地にデイケアセンター、診療所などの機能を備えた「老人共生センター」を建設することが決まっている。六月十八日の落成を予定。さらに、市内に移民資料館を建設する計画も立ち上がっている。
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 州南部の日系集団地ドウラードスでも、地元の南マット・グロッソ州日伯文化連合会が中心となって記念事業を進める。
 一九五三年に戦後はじめてのブラジル南部への移民として同地に入植した松原移民を支援した片山利宣氏の名を冠した「トシノブ・カタヤマ街」を東洋風に整備し、「東洋街(Rua Oriente)」とする事業が進む。同地では六月、市議会、日系団体の記念式典にあわせ、落成式を行う予定だ。

【サンタカタリーナ】

 州都フロリアノーポリスは、一八〇三年、日本の漁船若宮丸の乗組員四人がロシア軍艦に乗って到着した町。記録にある限り、日本人がブラジルの大地に最初の一歩を記した場所だ。
 同州では〇六年に州内六日系団体からなるサンタカタリーナ日系連合協会が発足、百周年に向けた事業計画を進める。
 日系社会の規模は小さいながらも、記念の百キロ駅伝や、日本人が主人公のオペラ「蝶々婦人」公演など独自色を打ち出す。同州では、州都のセントロの土地に日本庭園を作り、二百五年前の日本人到着を記念したモニュメントを設置する計画があがっている。

【バイーア】

 東北伯バイーア州では、日系集団地間の間隔が遠く離れているため、各地が独自の記念行事を挙行する予定。なお州都サルバドールでは、市内の公園内での日本庭園設置、野口英世博士の胸像建設、そして日系移民館の建設などが計画されている。バイーア連合会では、八月をめどに同州の日系人誌を刊行する予定だ。

【ポルト・アレグレ】

 〇六年に南伯移住五十周年式典を挙行した南リオ・グランデ州。州都ポルト・アレグレでは八~十月にかけて式典はじめ記念のイベントを企画している。記念事業としては、南日伯援護協会を中心に「南伯移住資料館」を開設する計画だ。

【サンパウロ近郊、州内】

 二世の安部順二氏が市長をつとめるモジ・ダス・クルーゼスでは、市が主体となって「百周年公園(Parque Centenario)」の計画を進めている。市内の約二十一万平方メートルの土地に建設するもので、市民広場やスポーツ施設などを備えた市民公園として移民の日までの完成をめざしている。
 園内の池にイッペーや桜など日伯の樹木を植えるほか、初期移民が暮らした住居を再現する計画などもあるという。同市では、「日本移民」をテーマに今年のカーニバルが行われる。
 同じく日本移民をカーニバルのテーマに取り上げるスザノでは昨年六月に市の百周年祝賀委員会が発足。日本庭園や資料館などを備えた「桜公園」を市内に建設する計画のほか、造形作家の大竹富江さんによる記念モニュメントの製作も進められている。
 大竹富江さんはまた、グアルーリョス国際空港とサントス市でも百周年記念モニュメントを製作することが決まっている。
 ABC地区でも百周年に向け動いている。
 サンベルナルド・ド・カンポでは六月に記念式典、関連イベントを行うほか、市内にある「笠戸丸広場」の再整備、瑞穂文化協会の敷地に「徳山広場」(姉妹都市の山口県徳山市、現周南市)を設置する計画だ。また、日本移民が開拓で伐採した木として、百年分、三万六千五百本の植樹をする案も出ている。
 サントアンドレでは、同地文協前の通りを「東洋街(Rua Oriental)」と改称し、姉妹都市の群馬県高崎市の名を冠した「高崎広場」などを建設する計画だ。
 「日本移民ゆかりの地」レジストロでは、同地の生産物である茶と米にちなみ、造形作家の豊田豊氏が古い製茶、精米機の部品を使った七つのモニュメントを製作。移民の日までにすべてを落成する予定だ。
 地域の文協からなるリベイラ連合と聖南西文化体育連盟と合同で、六月に記念式典を挙行。リベイラ・聖南西では、高さ十メートルの記念塔建設や、ドキュメンタリー製作、地域日系人口調査などを行う。先月には、車線拡張工事によりヴァルゼングランデ・パウリスタに完成した陸橋の名が「日本移民百周年陸橋」となることが決定した。六月に命名式が行われる。
 ヅットラ街道の日系集団地、サンジョゼ・ドス・カンポスでは地元百周年協会が中心となって、市の技術センター敷地内に記念公園の造成を計画中。二つの池をそれぞれ日本、ブラジル風に整備し、中央には鋼鉄製の鳥居を設置する。高さ十六メートル、完成すれば〃ブラジル最大〃の鳥居となるだろう。
 ソロカバナ線プレジデンテ・プルデンテでは今月、移民七十周年を記念して作られた「桜公園」の改修事業が終了した。園内には高さ四・五メートルの五重塔を設置、六月十八日には記念モニュメントを落成する予定だ。